アナログゲーム①
二週間のスキーバカンスが開け月曜日から学校と共に普段の生活が始まった。
バカンス最終日の日曜は恒例のスターバックス朝ご飯を行い(今回も前回同様すったもんだしながらの起床…)バカンス開けの学校へと備えた。バカンスバカンスと言えども、スキーはおろか、特に何処かへ行ったわけでもない我が家。バカンス最終日の日曜は『今日でバカンス最後やし!』を合言葉にしながら、一日を楽しむことにした。
朝一でスターバックスへ行く予定以外に正午から娘のバイオリンのレッスンがあったので、音楽教室の用意を持って近所のスターバックスへと向かった。朝一とゆうことでまだ人の少ない店内へ入り、それぞれ食べたい食べ物を注文し会計を済ませ、レジ横のカウンターで注文した食べ物を受け取ると、緩やかな音楽が流れる店内でゆったりとソファーに腰をかけ朝食を楽しんだ。レッスンに向かうまでかなりの空き時間があったので、大きいサイズのカフェラテをゆっくりと飲んでいると、チーズケーキやらサンドイッチを食べ終わった娘&息子が鞄から小さなメモ帳とペンを出し、二人でマルバツゲームを始めた。
携帯電話、スマホ、スイッチ、DS、野外でも便利に遊ぶ手段が溢れる今の世の中で、私の子供の頃と変わらないアナログ遊びをする我が子達が少し可笑しくて、カフェラテをすすりがら二人のやり取りをしばらく見守った。
しばらく三人でマルバツゲームに興じたものの、長時間続けるにはあまりに単純すぎ、飽きた私達はこれまたアナログになぞなぞ遊びにシフトを変更した。主に娘が出題し、私&息子が答えていたのだが、次から次へとするすると問題を解かれることに娘が怒りだし、
『じゃあ、次はママが何か難しい問題出して!!』
と言ったので、
『ここに箱が一つあるとします。中にママが何かを入れました。中身をあてましょう。ママには二回だけ質問できます。さてどうしたらいいでしょうか?』
とGoogleかどこかの会社の入社試験問題を出してみた。ドS心からくる嫌がらせ半分、子供の脳の柔軟さへの期待半分から、そんな難問を出してみたのだが、流石に難しすぎたのか全く正解には近づかずに終わってしまった。
口頭でそんな遊びをしながら、スタバを後にした私達三人は目の前にあった地下鉄から電車に乗ってバイオリンのレッスンへと向かった。それほど乗客の多くない地下鉄の車内にて、スタバでのクイズ大会に惨敗しっぱなしだった娘が、雪辱を果たさんと【テレフォン アラブ】と呼ばれるゲームをしようと提案してきた。
それはどんなゲームなのかと私が内容を尋ねると、最初の一人目が発した言葉を耳打ちで順に隣の人に伝え、最後の人まで正しく伝わるかというゲームとのこと。そう、なんの事はない普通の伝言ゲームだったのだ。しかし、伝言ゲームもこの三人だけでとなると
『一体どうなったら負け?』とか、
『そもそもアラブの人に失礼。』とか、
『というか、この三人だけで?』とか、
色々ツッコミ所盛り沢山につき、娘に物申したものの、頑なに
『ちょっとだけ!いいから!やろう!!』
と、よく分からない意地をはりだされたので、渋々ゲームをやることにした。
私と娘の間に息子を置き、ゲームを始めることになり、これはチャンスと私からスタートとした。私はこそっと息子に
『赤巻き紙青巻き紙黄巻き紙。』
と耳打ちをした。
予想通り、息子が『なんじゃそりゃ!』と言いたそうな顔をこちらへ向けた。
『はい、ちゃんと伝えてや。』
と言うと、
息子『…赤巻き…かみかみ?赤?青?とかなんか、こんなん…。』
娘『ええ!なんなんそれ!!そんなん、わかるわけないやろっ!!!』
私『な?だから3人やとこのゲームは無理やって。』
と、どう考えても『だから』と続かないいい訳を使い、さっさとゲームを終わらそうと言葉巧みに提案するも、わなわなする負けず嫌いの娘は
『まだ、私のターンをやってないっ!』
と主張。しかたがないので、次は娘→息子→私という順で再度ゲームを始めることにした。しかし、場所は地下鉄の電車内。そんな雑音の多い中、耳打ちといえど上手くやられねば相手に聞こえないし、相手に聞こえようとするにはそれ程小声でも伝わらない。案の定、娘が息子の耳に手を添え発した
『地中海性気候』
という単語は呆れるくらいに私に丸聞こえだった。思わず笑いそうになるも、必死にごまかした。母に丸聞こえだったことに気づかない二人は、ついさっきの私と息子のようなやり取りをはじめていた。
息子『えー、わからん!』
と文句を言う息子に
娘『いける!がんばれ!はい!』
という娘。
一体わが娘は何がしたいのか全くわからなかった。より難しい言葉を伝えれた方が勝ち?息子に難しい言葉を覚えさせた方が勝ち??なんだこれ???本筋を見失っているだろうと心の中でツッコミながら、息子の困惑具合がおかしくて
『いけるいける!地中…かい…でどう続いた?どんなんやった??』
と私もふざけて息子に協力を始めた。
しばらく娘&私で息子を持ち上げるも息子ギブ。さらに、
『てか、なんでママ答えわかったんよ。』
と娘から指摘が入った。
『だって丸聞こえやったし。』
とタネ明かしすると、
『じゃあ、今の無しやわ。はい、次はママからな。』
と、言われ
『えーーーまたー?』
と文句を言った。いい加減このわけのわからない不毛なゲームを終わらせようと、私は息子に耳打ちした。
すぐさまこちらを振り向いた息子の顔が
『この人ありえへん。』
と言っているようだった。
『はい、じゃあ、がんばれ!!』
というと
『すり…ちゃらちゃらちゃら…みたいなん。わからんよ!こんなんっ!!』
と息子が再びギブ。それ見たことかと、
『ほら、もうやめとこって。真ん中の人が大変やしな。』と二人に提案した。
娘『なんて言ってたん、今?』
ママ(私)『スリジャヤワルダナプラコッテ。』
娘『は!?何それ!!?そんなんひどいわっ!何かもわからん!』
マ『たしかスリランカの首都やったんちゃうかなー。』
娘『そんなん伝わるわけない!』
マ『いや、そっちも伝わらなさそうな言葉やっってたやん。そもそも、このゲームは三人やと真ん中の一人が大変になるだけやから、もうやめとこ。な。』
横で、『もう無理。』と、散々な目に遭ったという顔をしている息子を目にし、ようやく娘が不毛なる伝言ゲームの終了を受け入れた。不毛ではあったものの、それからしばらく、
『でもなかなか楽しかったよなー。』
と三人でテレフォンアラブを振り返って笑いあった。
まだ暫く電車が目的の駅に着くまで数駅あることを確認すると、娘が
『しりとりしよ。』
と言い出した。
つづく
関連過去記事