素敵と思えぬ時もある
ぬくぬくと暖かい電気毛布と掛け布団に埋もれながら気持ちよく寝ていると
『ママ!ママ!』と娘の声がした。
マ(私)『……』
娘『なんかさ、外からめっちゃ声聞こえるんやけど…大丈夫?』
マ『?』
昨夜、夜更かしをしてしまった私は寝ぼけながら耳をすませた。外から子供達の声が聞こえた。
マ『!!!!しまった!!!』
娘『…よな。』
我が家の斜め前に息子の通う小学校があるのだ。おかげで登下校の時間になると外から子供達たちの楽しそうな声がよく聞こえてくる。
そう、目が覚めると外ではすでに子供達が登校中だったのだ。慌てて息子を起こしに行くと熟睡していた。
『おきて!おきて!ごめん!もう学校の時間!えっと…』
慌てながら、時間を確認しようと目についた時計を見てぎょっとした。
マ『!!!ごめん~!!9時半!!!もう学校始まってる~!!!!』
息『……えぇ!?』
娘『ママ!落ち着いて!!あの時計、夏時間のままのやつ!!まだ8時半!!』
マ『!!そうやった!』
(たしかに、登校中の声がしてるんだから9時半のはずはない!しかし、でもやっぱり遅れてるのは遅れてる!!)
マ『頼むから起きてー!!』
息『んー』
なんとか動き出した息子を見てふと、思い出した。
マ『あああ!!今日って午前中は遠足って昨日いってなかった!!?』
息『!!!!!そうやった!!!』
(しまったーーー!どうしよ!!どうしよ!!どうするよー!!???)とパニクる母。
さすがの息子も慌て、直ぐさま連絡帳を学校用のリュックから漁り、遠足の出発時間を確認した。
『ママ、とりあえず大丈夫!9時からやから!』
と救いの言葉を言ってくれた。
しかし、やはり遠足に間に合おうと遅刻は遅刻。先日、娘から
『もし校長先生が門にいる日に遅刻したら、校長先生に15分くらいめちゃくちゃ怒られるねんで』
と、聞いたところだっただけに、それはまずいと何としてでもこの3分ほどで息子を学校にねじ込もうと、マッハで朝ごはんを作った。もはや栄養云々ほったらかし、飲み物を用意する時間すら惜しく、とりあえずエネルギー源だけでもとサンドイッチ用の食パンにハムだけを乱暴に挟んでから、着替え終わった息子に玄関へ急ぐよう促し、靴を履く息子に上着とサンドイッチ突き付け
『はやく!はやく!』と急がせた。
『いや、ちょっと一気には無理やから、ご飯いいよ。』と靴を履きながら言う息子の口にサンドイッチをちぎってねじ込んだ。
『ん~』とサンドイッチを口にいれながら唸る息子。野菜もマヨネーズもないハムサンドはどうみても飲み込みづらそうだった。上着を着てリュックを背負う息子に謝りながら、さらにちぎったサンドイッチを渡した。
息子『もーいいよー』
マ『いいから!!階段降りながら食べて!しっかり噛んで!!ちゃんと落ち着いて!!転けないように気をつけて急いで!!いってらっしゃい!!』
と、若干の矛盾を感じつつ言いたいことを一通り言い、アパートの階段を足早に降りる息子を見送った。扉を閉め振り返ると、呆れ果てヤレヤレ顔の娘が食卓から私を見ていた。そして、
『ママさぁ、ほんま私がいてよかったよな。』
と言い放たれた。
『……本当にいつも感謝してます。』
としか、言いようがなかった。
昨日の日記を書いていた私と今日の私は別人かもしれない。