i-chi-tora’s ura-diary 一虎裏日記

"王様の耳はロバの耳"よろしく、徒然なるままに憎らしくも可愛い娘&息子の愚行を愛をもって暴露していくことを中心とする裏日記

幸運のバナナ

「午後12時45分審査開始」

と書かれたバイオリンコンクールの受験案内をもとに、バイオリンの先生から

『直前の練習用に練習室を借りれるので朝11時に会場に来て下さい。』

と言われたので、万が一にも遅れるわけにはいかないと、コンクール当日の昨日、娘&息子&私の三人は予定していた時間よりかなり早めに家を出発した。

 

コンクール会場11時集合で審査が12時45分開始だとなると、昼ご飯をゆっくり食べれないなと思ったので、行きしなに何か軽くつまめるパンでも買って持っていこうと考えていたのだが、困ったことに会場に着くまでのスーパーがことごとく閉まっていて、結局何も買えないまま、10時半というかなり早い時間に会場へ到着してしまった。

早めに来たにも関わらず、会場に入るとすぐに娘のバイオリンの先生と会うことができた。先生の言うことには、午前中に行われている他のレベルの審査がかなり長引いていて、娘の審査も12時45分開始とはいかず、もっと後になるだろうということだった。

それを聞いて、来る途中に何も食べ物を買えていなかった私は焦った。我が娘は単純なので、お腹が減っている時と満腹時ではエネルギーの放出量があからさまに違うのだ。空腹状態でコンクールなんて、折角の今までの練習が水の泡になりかねないと思い、先生に近くにスーパーかパン屋さんはないですかと尋ねた。

『……スーパーはあるかなあ…確かに出来ればすぐにエネルギーになるバナナなんかを食べておいたほうがいいですね。私もよく演奏の少し前にバナナを食べるんですよ。一つ向こうの大きい駅の方へ行かれたら、スーパーはわからないけど、パン屋さんとかスターバックスとかはありましたよ。』

と教えてくれた。

それをきくやいなや、先生のことが大好きで崇拝しきっている単純な我が娘は

『バナナ!バナナ探そ!!先生もいつもバナナって言ってるし、バナナ食べる!!』

と言いだした。

どこに何屋さんがあるかもわからない状況でそんな我儘とも言える娘の要求に、普段なら一蹴している私だが、昨日の私はそんな娘の考えに異を唱えるはずもなく、

『よし!先生にあやかってバナナを探しにいこう!!今日のラッキーアイテムはバナナだ!!』

と賛同し、先生に

『少しバナナを探しに行ってきます。』

と伝えた。私達親子三人とかれこれ五年間も付き合ってくれている彼女は、笑いながら我ら親子を送り出してくれた。

とりあえず先生の言ったとおり、一つ向こうの大きい駅を目指すことにした。スタバやパン屋さんにもカットされたフルーツはあったはずだと、片っ端からバナナを探すことにした。

パリの街では、日曜日を休業日としている店舗が多く、場所によっては片っ端から全ての店が閉まっていたりするのだ。コンクール会場のある界隈はまさにそんな場所だった。古くからの音楽学校があるせいか、楽器屋さんばかりが大通りにずらりと並んでいるのだが、見事に全ての店が閉められていた。

バナナを目的とするもバナナを売っていそうな店はなく、道すがら目にはいる休業中の楽器屋さんのレトロなショーウィンドウは時折私達の足を止めた。

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楽器のあれこれに見とれている場合じゃないと言いながら、止まっては進みを繰り返す私達は、ダラダラとしながらも駅の手前に一軒のスターバックスを見つけた。店内に入り、サンドイッチやカットフルーツが並ぶ冷蔵コーナーをチラっと見ては、バナナがないことを確認すると、店員さんに一言謝ってから店を出た。スターバックスにはあるんじゃないだろうかと期待していたので、私達は少し焦った。

それからスターバックスを後に、急ぎ足で少し歩くと駅前についた。パン屋さん、ビザ屋さん、スターバックスマクドナルドが視界に入ったのだが、いまいちバナナがありそうなお店はなかった。

しかし、もしかしたらあるかもしれないと、それらの店の前まで行きガラス越しに店内を見てはバナナの有無を確認した。だが、バナナはなかった。大きな駅の回りの通りをぐるりと歩いていて思い出した。

ママ(私)『待って!駅の売店にあるんじゃない!?』

娘『ほんまや!』

私達三人は慌てて駅構内へ入った。

案の定、駅構内にある大きな売店にバナナが山積みになって売られていた。

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ラッキーアイテムをゲットだ!!と我々三人は小さな店内で喜び、4本のバナナをお会計へ持っていき精算をすませると、コンクール会場へと戻っていった。

ついさっきショーウィンドウの楽器を眺めながらダラダラ歩いていた道を急ぎ足で逆戻りしながらバナナを買えたことを喜びあった。至極勝手な験担ぎではあるのだが、これだけ店が閉まっている中、目的のバナナに出会えたことは単純な我々にとっては幸運を手に出来たような気分だったのだ。

『これでばっちり!後は楽しく弾くだけやな!』

と言いながら、もうあと数十メートルで会場に着くというところまできたとき、コンクール会場の向こうから歩いてくる女性に目がいき固まった。娘もほぼ同時に歩みを止めた。

息子が

『めっちゃバナナやん!!!!』

と叫んだ。

向こうから向かってくる女性がなんと両手いっぱいにバナナを抱えて歩いていたのだ。娘が吹き出し

『買いにいかんでよかったやんっ!!!!』

と叫んだ。

いやいや、まてまてと、

『いくらなんでも歩いている人からは売ってもらえへんやろ!!あの人も要るからあんな抱えてるんやし!たまたま通っただけやしな!』

と、娘を宥めた。

そりゃそうか、と一瞬騒いだ自分を落ち着けた娘だったが、これだけバナナバナナと探しまわった挙げ句、会場前で大量バナナと出会ったことがおかしくて、大笑いとなった。もちろん私&息子も笑った。

『これは、いいことありそやな。』

と勝手な験担ぎに期待をしながら、上機嫌での会場入りとなった。

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演奏後、

『あー!めっちゃ楽しかったっ!!!』

と、自身の演奏に満足そうな娘を見て、こんな神経図太い性格に験担ぎが必要だったんだろうかとも思えたが、とりあえずバナナのおかげということにしておいた。

 

審査結果は後日郵送なので今はまだわからないのだが、何はともあれ楽しい一日となり満足なコンクールであった。

 

 

次回からはバナナ持参で行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Enjoy your music.

こんな写真を晒されているとは

露程も思っていないであろう娘

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いくら顔を隠せども

なんともふてぶてしい偉そうな態度から

怯むことない強気な性格が滲み出ている

 

明日も変わらずこんな態度を貫き通せと

切に願う。

 

明日はバイオリンコンクール

はてさてどうなることやら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホワイトデーのお返し

ホワイトデーの昨日、学校が終わり娘が帰ってくるやいなや

『ママ!今日なんの日か知ってる!!?』

と、私に向かって質問してきた。

 

『今日は14?ああ、ホワイトデーか。』

と答えると、娘が学校の鞄をごそごそとあさり、

『見て!!もらってん!!!バレンタインのお返しにって、○○君がクッキーくれたん!あと、学校で△△くんと□□ちゃんも飴とかチョコ持ってきてくれてて皆で食べたん。』

と、大喜びしながら小さなクッキーの箱を私に見せつけてきた。娘のあまりの嬉しがりように私は少し羨ましくなった。

ママ(私)『いーなー。ママもおじいちゃんにチョコの一つでも送っときゃよかった。そしたら今頃美味しいお返しが貰えてたかもしれんのになー。』

娘『ああ。おじいちゃんは確かに何かくれそう!』

マ『ママが小さい頃、毎年バレンタインにおじいちゃんにチョコあげてたんやけど、あげる時にお返しをリクエストして渡してたん。「お返しはたこ焼きにしてな。」とか。あああ、リクエスト付きでおじいちゃんに何かあげればよかったー。』

娘『今さら言ってもしゃーないやん。まあ、このクッキーは私のやし、食べんといてな。』

私はこの娘の一言に対し、瞬時に理不尽さを感じた。世間の心優しいお母さん達はこんな時、娘がバレンタインのお返しを貰えて喜んでいる様を微笑ましく見つめたりするのかもしれないが、先月のバレンタインにチョコレート工場を思わせるくらい、大量のガトーショコラの制作を娘に強いられた私は、そんな心優しいお母さんのような振る舞いはできなかった。私は思いのまま

『…なあ。知ってる?バレンタインのチョコケーキ、あれほとんどママが作ったって?』

と娘に言ってみた。すると、

『ははは。わかってるよ。でもさ、バレンタインの時に、「ママと作ったチョコケーキやねん」って皆に言ってケーキ渡したんやけど、お返しは「ママにもあげてな」とは言われてないからなあ。』

と、なんて性格の悪い娘だろうかと思ってしまうような返事がきた。が、口ではこう言いながらも、それなりに私へ感謝をしていることもわかっているし、それほどに皆からのお返しは嬉しかったのだろうと、理不尽ながらも渋々と、それ以上は食い下がりはしなかった。

しかし、やはり羨ましいものは羨ましかった。己のとる行動に見返りを求めるべきではないと頭では思うのだが、あんなに大量にガトーショコラを作ったのに…と思わずにはいられなかった。所詮、母は黒子であり裏方か…と致し方なしかとやさぐれていると、床でゴロゴロと漫画を読んでいる息子が目にはいった。ふと

『なあ。ホワイトデーって知ってる?』

と息子に聞いてみると、

『え…知ってるよ。』

と返事がかえってきた。ほほう、知ってはいるのかと思い、

『ママ、チョコケーキあげたような気がするんやけどなあ……』

と、確実にお返しなんぞ何も用意していない息子に対して呟いてみた。すぐさま

『ええ!?何もないよ!!だって僕何もあげれるもんないし!!おやつももってないで!!』 

と、必死に己の無力を説明する息子。

『うそうそ。ママがあげたかっただけやから、いいねんで。』

と、すぐに慌てる彼をなだめた。

しばらくすると、息子は手に持っていた漫画をパタンとおいて立ち上がり、私を見ながらこちらのほうへやって来た。

『?』

よくわからない笑みを浮かべながら、両手を大きく広げたかと思うと、食卓の椅子に座っていた私に無言でハグをしてくれた。

 

マ『え?何これ?まさか、お返し?』(笑)

息子『ふふふ。』(笑)

 

母&弟のやりとりに娘、爆笑。

 

 

息子の将来が不安になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナログゲーム②

『しりとりしよう。』

地下鉄電車内にて、母への対抗心を再燃させたのか娘がまたしても提案してきた。『もう巻き込まれるのはゴメンだ。』とでも言いたそうな息子は参加を辞退。それでは二人でしようと食い下がる娘に

『しりとりは終わらないから嫌や。』

と断ると、

『普通のじゃなくてさ。増えていく分も最初から言わなあかんやつしよ。私がリンゴって言ったら、ママは「リンゴ、ゴリラ」っていうねん。で、私は「リンゴ、ゴリラ、ラッパ」って全部最初から増えた分を言ってからしりとりするねん。増えていく分覚えとかなあかんから、絶対勝負つくやろ。』

と、ちょっと変わったしりとりを提案してきた。それならば面白そうだと、軽い気持ちでしりとりを始めた。

娘『じゃあ、私から!アリ(蟻)!!』

マ『アリ、リス。』

娘『アリ、リス、スリ。』

マ『アリ、リス、スリ、リカ』

娘『アリ、リス、スリ、リカ、ガリ

マ『アリ、リス、スリ、リカ……』

母娘で交互に復唱しあう呪文のようにしりとりを唱えた。地下鉄電車内で、外国人二人がわからぬ言語で交互に復唱する様は周りの人達からすると若干不気味だろうよと、そんなことを悠長に思いながら娘としりとりを続けた。

娘『アリ、リス、スリ、リカ、ガリ、リンゴ、ゴリラ、ラクダ、ダンゴ、ゴマ、マゴ、ゴ、ゴマシオ、オニギリ、リコウ、ウシ、シ』

マ『……アリ、リス、スリ、リカ、ガリ、リンゴ、ゴリラ、ラクダ、ダンゴ、ゴマ、マゴ、ゴ、ゴマシオ、オニギリ、リコウ、ウシ、シ、シンガポール

娘『アリ、リス、スリ、リカ、ガリ、リンゴ、ゴリラ、ラクダ、ダンゴ、ゴマ、マゴ、ゴ、ゴマシオ、オニギリ、リコウ、ウシ、シ、シンガポール、ルビー』

どんどん覚えないといけない単語が増えていき若干辛くなってきた。伝言ゲームのように難しい単語を混ぜたら難易度はあがるだろうがこちらとしても難易度があがるか…とかなんとか考えながら、ひたすら増え続ける単語を覚えていった。負けず嫌い母娘は一向にしりとりを止めず、地下鉄を降りてから音楽教室までの道を歩きながら、もはやしりとりではなく記憶力勝負と化したそれを制するため二人は淡々と単語を言い合った。時折、息子から

『まだぁ~?』

と苦情がくるも、

『もう終わるよ!』

といいながら続ける母娘。お互い、『早く忘れて負けてくれ!』と思っていただろう。少なくとも私はそう強く願っていた。しかし、ここまで来たら負けれまいと必死になり、結局、娘のバイオリンのレッスンが始まる寸前まで言い合ったのだが勝負がつかないままとなった。

正午から一時間のバイオリンレッスンを終え、その後バイオリンの先生が

『安くて美味しいタイ料理屋さんがこの辺にあるんで行こうと思うんですが、よかったらご一緒にどうですか?』

とお昼ご飯に誘ってくださった。

朝も外食だったのだから昼は自宅へ帰るつもりだったのだが、【安い、旨い、タイ料理】という抗いがたい単語を並べられた上、

『せっかくのバカンスやったのに、さほど遊びにも行ってないっ!!』

という子供達の主張に同感し、ありがたくご一緒させていただいた。

教室から歩いてすぐのところにあったタイ料理屋さんは小さな店構えで店内に食べれる場所はなく、カウンターで注文し、路上に並べられたテーブル席で食べるという、屋台のようなお店だった。テーブルで注文した料理を待っていると、屋台風とは思えないお洒落に盛り付けられた美味しそうな料理が運ばれ、娘&息子&私は大はしゃぎした。

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天気のいいバカンス最終日の午後、子供達の大好きなバイオリンの先生をいれて四人で路上タイ料理を楽しめ、バカンスの〆としては満足すぎるほどだと思えた。

昼食を食べ終わり、レッスンのお礼とお別れを告げ、三人で帰りの地下鉄へと向かった。地下鉄の電車に乗るとすぐに娘が

『続きするで。(しりとりの)』

とまさかの一言を放ってきた。

マ『ええ!?まだやるん?お腹いっぱいやし、もうつらいんやけど…』

娘『いけるって。はい。アリ、リス、スリ、リカ、ガリ、リンゴ、ゴリラ、ラクダ、ダンゴ、ゴマ、マゴ、ゴ、ゴマシオ、オニギリ、リコウ、ウシ、シ、シンガポール、ルビー、ビストロ、ローリングスカイ、イクラ、らっきょう、うきわ、わに、にんにく、くのいち。はい、ママやで。』

この娘、容赦ないな…と思いながら再び

『……アリ、リス、スリ、リカ、ガリ、リンゴ、ゴリラ、ラクダ、ダンゴ、ゴマ、マゴ、ゴ、ゴマシオ、オニギリ、リコウ、ウシ、シ、シンガポール、ルビー、ビストロ、ローリングスカイ、いくら、らっきょう、うきわ、わに、にんにく、くのいち、ちかてつ。』

と続投に応じた。我関せずと無関心をきめこむ息子の横、再びデジャヴュのように呟きあった。

『アリ、リス、スリ、リカ、ガリ、リンゴ、ゴリラ、ラクダ、ダンゴ、ゴマ、マゴ、ゴ、ゴマシオ、オニギリ、リコウ、ウシ、シ、シンガポール、ルビー、ビストロ、ローリングスカイ、いくら、らっきょう、うきわ、わに、にんにく、くのいち、ちかてつ、つめ、めぐすり、リメイク………』

『アリ、リス、スリ、リカ………』

いつになったら終わるんだ…と、早々に勝負がつくだろうとたかをくくっていたことを後悔した。結局、負けず嫌い母娘によるしりとりの体をした記憶力耐久バトルは、地下鉄と徒歩を合わせて計約一時間の帰り道の間も勝負はつかなかった。

爽やかな昼食時間から一転、自宅の前に着く頃には脳みそが疲れきっているような気分だった。生まれて初めてしりとりを辛いと感じた。自宅を前に私は、

『……もうやめよ…ママもう無理……考えたくない…』

と、敗北を認めた。

母の敗北に娘は嬉しそうだった。

 

 

アナログゲームも侮り難しと実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナログゲーム①

二週間のスキーバカンスが開け月曜日から学校と共に普段の生活が始まった。

バカンス最終日の日曜は恒例のスターバックス朝ご飯を行い(今回も前回同様すったもんだしながらの起床…)バカンス開けの学校へと備えた。バカンスバカンスと言えども、スキーはおろか、特に何処かへ行ったわけでもない我が家。バカンス最終日の日曜は『今日でバカンス最後やし!』を合言葉にしながら、一日を楽しむことにした。

 

朝一でスターバックスへ行く予定以外に正午から娘のバイオリンのレッスンがあったので、音楽教室の用意を持って近所のスターバックスへと向かった。朝一とゆうことでまだ人の少ない店内へ入り、それぞれ食べたい食べ物を注文し会計を済ませ、レジ横のカウンターで注文した食べ物を受け取ると、緩やかな音楽が流れる店内でゆったりとソファーに腰をかけ朝食を楽しんだ。レッスンに向かうまでかなりの空き時間があったので、大きいサイズのカフェラテをゆっくりと飲んでいると、チーズケーキやらサンドイッチを食べ終わった娘&息子が鞄から小さなメモ帳とペンを出し、二人でマルバツゲームを始めた。f:id:i-chi-tora:20190314012432j:image

携帯電話、スマホ、スイッチ、DS、野外でも便利に遊ぶ手段が溢れる今の世の中で、私の子供の頃と変わらないアナログ遊びをする我が子達が少し可笑しくて、カフェラテをすすりがら二人のやり取りをしばらく見守った。

 

しばらく三人でマルバツゲームに興じたものの、長時間続けるにはあまりに単純すぎ、飽きた私達はこれまたアナログになぞなぞ遊びにシフトを変更した。主に娘が出題し、私&息子が答えていたのだが、次から次へとするすると問題を解かれることに娘が怒りだし、

『じゃあ、次はママが何か難しい問題出して!!』

と言ったので、

『ここに箱が一つあるとします。中にママが何かを入れました。中身をあてましょう。ママには二回だけ質問できます。さてどうしたらいいでしょうか?』

Googleかどこかの会社の入社試験問題を出してみた。ドS心からくる嫌がらせ半分、子供の脳の柔軟さへの期待半分から、そんな難問を出してみたのだが、流石に難しすぎたのか全く正解には近づかずに終わってしまった。

口頭でそんな遊びをしながら、スタバを後にした私達三人は目の前にあった地下鉄から電車に乗ってバイオリンのレッスンへと向かった。それほど乗客の多くない地下鉄の車内にて、スタバでのクイズ大会に惨敗しっぱなしだった娘が、雪辱を果たさんと【テレフォン アラブ】と呼ばれるゲームをしようと提案してきた。

それはどんなゲームなのかと私が内容を尋ねると、最初の一人目が発した言葉を耳打ちで順に隣の人に伝え、最後の人まで正しく伝わるかというゲームとのこと。そう、なんの事はない普通の伝言ゲームだったのだ。しかし、伝言ゲームもこの三人だけでとなると

『一体どうなったら負け?』とか、

『そもそもアラブの人に失礼。』とか、

『というか、この三人だけで?』とか、

色々ツッコミ所盛り沢山につき、娘に物申したものの、頑なに

『ちょっとだけ!いいから!やろう!!』

と、よく分からない意地をはりだされたので、渋々ゲームをやることにした。

私と娘の間に息子を置き、ゲームを始めることになり、これはチャンスと私からスタートとした。私はこそっと息子に

『赤巻き紙青巻き紙黄巻き紙。』

と耳打ちをした。

予想通り、息子が『なんじゃそりゃ!』と言いたそうな顔をこちらへ向けた。

『はい、ちゃんと伝えてや。』

と言うと、

息子『…赤巻き…かみかみ?赤?青?とかなんか、こんなん…。』

娘『ええ!なんなんそれ!!そんなん、わかるわけないやろっ!!!』

私『な?だから3人やとこのゲームは無理やって。』

と、どう考えても『だから』と続かないいい訳を使い、さっさとゲームを終わらそうと言葉巧みに提案するも、わなわなする負けず嫌いの娘は

『まだ、私のターンをやってないっ!』

と主張。しかたがないので、次は娘→息子→私という順で再度ゲームを始めることにした。しかし、場所は地下鉄の電車内。そんな雑音の多い中、耳打ちといえど上手くやられねば相手に聞こえないし、相手に聞こえようとするにはそれ程小声でも伝わらない。案の定、娘が息子の耳に手を添え発した

『地中海性気候』

という単語は呆れるくらいに私に丸聞こえだった。思わず笑いそうになるも、必死にごまかした。母に丸聞こえだったことに気づかない二人は、ついさっきの私と息子のようなやり取りをはじめていた。

息子『えー、わからん!』

と文句を言う息子に

娘『いける!がんばれ!はい!』

という娘。

一体わが娘は何がしたいのか全くわからなかった。より難しい言葉を伝えれた方が勝ち?息子に難しい言葉を覚えさせた方が勝ち??なんだこれ???本筋を見失っているだろうと心の中でツッコミながら、息子の困惑具合がおかしくて

『いけるいける!地中…かい…でどう続いた?どんなんやった??』

と私もふざけて息子に協力を始めた。

しばらく娘&私で息子を持ち上げるも息子ギブ。さらに、

『てか、なんでママ答えわかったんよ。』

と娘から指摘が入った。

『だって丸聞こえやったし。』

とタネ明かしすると、

『じゃあ、今の無しやわ。はい、次はママからな。』

と、言われ

『えーーーまたー?』

と文句を言った。いい加減このわけのわからない不毛なゲームを終わらせようと、私は息子に耳打ちした。

スリジャヤワルダナプラコッテ

すぐさまこちらを振り向いた息子の顔が

『この人ありえへん。』

と言っているようだった。

『はい、じゃあ、がんばれ!!』

というと

『すり…ちゃらちゃらちゃら…みたいなん。わからんよ!こんなんっ!!』

と息子が再びギブ。それ見たことかと、

『ほら、もうやめとこって。真ん中の人が大変やしな。』と二人に提案した。

娘『なんて言ってたん、今?』

ママ(私)『スリジャヤワルダナプラコッテ。』

娘『は!?何それ!!?そんなんひどいわっ!何かもわからん!』

マ『たしかスリランカの首都やったんちゃうかなー。』

娘『そんなん伝わるわけない!』

マ『いや、そっちも伝わらなさそうな言葉やっってたやん。そもそも、このゲームは三人やと真ん中の一人が大変になるだけやから、もうやめとこ。な。』

横で、『もう無理。』と、散々な目に遭ったという顔をしている息子を目にし、ようやく娘が不毛なる伝言ゲームの終了を受け入れた。不毛ではあったものの、それからしばらく、

『でもなかなか楽しかったよなー。』

と三人でテレフォンアラブを振り返って笑いあった。

まだ暫く電車が目的の駅に着くまで数駅あることを確認すると、娘が

しりとりしよ。』

と言い出した。

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

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難解な問題

昨日は厄介な心配事から頭を切り離そうと、無心になるべくテトリスなんぞをしてみたものの、やはり集中しきれなく、思ったように上手くいかなかったので、すぐにやめてしまって早々に眠りについた。

朝になり、目が覚めて布団の中で携帯電話をさわっていると、息子がそっと家の固定電話をもってきた。

『ママ。見てみて。』


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固定電話の表示をみると

【084】

と表示されていた。

起きぬけの私には、突然の電話表示が何を意味しているのか全くわからなかった。

『んん?』

とつぶやくと、息子がふふふと笑い

『おはよ。』

と、してやったりといった顔をしながら私に言った。

【おはよ=084】

か。

『フフ。暗号やな。』

と息子に言うと、彼は大層喜んだ。

こんな些細なことで楽しそうにしている彼をみて、昨日から色々と考えすぎていた自分がアホらしくなった。朝から愉快な『おはよう』を貰って、気分がよくなり布団から出ようとしたその時、

『ママ!これも!』

と再び固定電話を私に突きつけてきた。


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【662524278482】

???

これも暗号だろうと、何が書かれているか考えた。考えても考えてもわからず、うーん…と一人唸っていると

『おなかがすいた。』

と、ニヤッとしながら息子に言われた。

 

662524278482

 onakagasuita

oは6のプッシュボタン、nも6のプッシュボタンを使ってアルファベットを入れるからとのこと。

 

 

息子よ、それはむずかしすぎだ。

 

 

 

 

 

 

 

ゆるゆるいく

今日はなんだか一日中うわの空だった。
朝から子供達とマルシェへ行き、魚屋さんと談笑したり、八百屋さんのお姉ちゃんやスーパーのレジのおばちゃんとも挨拶をして少し話しをしたりした。
午後になってからは、同じ音楽教室に通う生徒さんが娘&息子に、合同自主練習を一緒にしようと誘ってくださっていたので、娘&息子とともに楽器と楽譜とおやつを持って彼女のうちへと伺った。彼女の家につくと、うちの娘&息子の他にも同じ音楽教室に通う生徒が三人招かれていた。挨拶をしてから練習の準備をし、皆で揃って6月に行われるオーケストラのコンサートにむけて練習に励んだ。

演奏者ではない私は、練習に参加できるはずもなく、同じく保護者として付き添って来られていた他の方と、端のほうで出していただいていたお茶をすすりながら皆の演奏をきいていた。時折、休憩があり、皆が持ち寄ったたくさんのお菓子を食べながら談笑したり、招いて頂いたお礼にと息子が一人で演奏を披露することになったりと、合同練習をしつつワイワイと楽しい時間を過ごした。

 

にもかかわらず、どこか終始わたしの頭はうわの空だったのだ。

原因はある一つの心配事のせいだった。こんな風に日記を書き出す直前まで、そんな気分は継続し、気分が乗らないからと、いっそ今日の日記はやめておこうかとも思っていた。

しかし、そんな時こそ思考をはっきりさせようと思え、書き出すことにしたのだ。

 

わたしには心配事がある。

それは、先日から続いている【天井ヒビ事件】だ。

今朝、なんとヒビが進行しているように思えたのだ。

あれ?ここにもヒビがあったっけ?あれ?こっちも???

と、見慣れないヒビを今朝新たに意識したのだ。

おいおいこの家、大丈夫?と不安を感じた。そんな不安を感じた直後に、天井のヒビについての問題を伝えていた管理会社から

『それはうちの問題外なので、大家さんと解決してね。』

という、無情なるメールがきたのだ。

どこに原因があるかも専門家がみないとわからないだろうに、丸投げかっ!とイラッとした。

我が家の大家さんはとても優しい女性なのだがフランス南部に住んでいる70才を越えている方なのだ。しかも、息子さんは海外にいるとかで他に対応してくれる人がいないようで、何か問題があるたびに、彼女自ら対応してくれたうえ、いつも私に

『ごめんなさいね。不便をかけて。』

と言ってくれる。

そんな彼女に【天井ヒビ割れ事件】なんてややこしくなりそうな案件を振りたくもないのだが、実際おきてるヒビは正直不安で仕方がない。

この、そこまで焦らせるのも気が引ける気持ちと、火急的速やかに解決へと行動を進めたい気持ちと、しかし自分はもう周りからの返事を待つしか術がないという現状に、気持ちが落ち着かなくてしょうがない。

そう、頭の中が難航気味の【天井ヒビ事件】で再びキャパオーバーを起こしかけているのだ。

物事は出来る限りのことをした後は、なるようにしかならないのだから、こんな時こそゆるゆるできる余裕をもてる人間になりたいと心底思う。しかし、まだまだそんなできた人間には程遠く、とにもかくにも今日は全く余裕がなかった。

 

こう改めて考えを文字にすることで少し脳内整理ができた気がする。

 

このまま無心になるべくテトリスにでも励むとしよう。

 

ぼちぼちゆるゆるがんばるとする。


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(ゆるゆるしすぎたのか、昨夜書き上げ、公開ボタンを押し忘れていました。正しくは昨日のお話。)