i-chi-tora’s ura-diary 一虎裏日記

"王様の耳はロバの耳"よろしく、徒然なるままに憎らしくも可愛い娘&息子の愚行を愛をもって暴露していくことを中心とする裏日記

届かぬ想い

『これ以上食べたらお腹痛くなるから、もうやめとき!』

と、大好物のカレーライスの何度目かのお替りを制止し、夕食を終えた私達三人はここ最近ドはまりしている、日本のドラマ【ごくせん】をみることにした。

 

【ごくせん】とは女優仲間由紀恵さん演じる主人公ヤンクミが極道一家の跡取り娘でありながら正体を隠し、高校の荒れたクラスの担任教師として日々奮闘しながら生徒たちとの絆を深めていくという、かれこれ10年以上前に放送されていた青春ドラマ(?)である。

当時放送されていた頃は見たことがなかったのだが、原作である漫画を少し読んだことがあったので、数週間前の暇なある日、子供たちに日本の高校生の生活っぷりがどんなものか見せてやろうと思いつき、ユーチューブで見始めたのだ。たまたま暇で見始めたものの、毎話ごと何かしらの問題がクラスや生徒の家庭内で勃発しては、さっそうと現れて敵をやっつけ解決していく仲間由紀恵さんを見て

『これ、あれやん!!暴れん坊将軍やん!!流れが時代劇!!』

と、気づいてしまい、弱時代劇好きの心をくすぶられ、そのままずるずるエピソード1から3まで網羅するほどにはまってしまったのである。

 

テレビの前で立ったままごくせんを見ている息子が突然ヤンキー口調の真似をした。

『あかんで!そんな言い方したらあかんって言ってるやん。この人達も普段は丁寧に話してはるやろ。荒っぽく話したらかっこいいんじゃないやん?いつも見てるコナン君も話し方丁寧やろ?』

そういうと息子は『…うん。』と納得し、何を考えたのか今度は正座をしながら再びドラマを見だした。

暫くすると、息子が突然立ち上がりテレビ画面を指さしながら

『ママ!!この人が犯人やで!!!』

と叫んだ。

『これコナンちゃうから犯人おらんはずやから、大丈夫。』

『でも、この男の人めっちゃ蹴ってるから、むっちゃ悪い人やん!!』

『…うん…でも犯人…まあ悪い人やわ。でも、見たらわかるから犯人探さんいいよ。』

『ふーん、わかった。』

さっきチラッとコナンの話を持ち出したがためにおかしな方へ見方を変えたか…と、一人納得し、再びドラマを見続けた。

 

ドラマ終盤、生徒達がピンチに陥ると暴れん坊将軍かのように担任教師ヤンクミ(仲間由紀恵さん)が現れた。盛り上がる音楽の中、ザコ悪軍団を蹴散らして、悪者達へ決め台詞を放つ瞬間が来た。

『私?私はその子達のせんプツッ……………

まさかの突然音声切れ。

 

娘『!!!!!…はぁ???』

ママ(私)『!!!!…アンクワイヤーブル…』

無情にも突然無音で字幕のみとなった見せ場シーンに娘&母で憤慨。そして落胆。

娘『…今さ、『くっそ!!!!』とか言いたかってんけど、堪えてんで。えらいやろ?』

マ『…奇遇やな。ママもそう言いそうになったのを堪えたからこそ、マイルドに『信じられへん』ってフランス語で言ったんやん。』

娘『よく耐えた。』

マ『やな。うちら今のはよくがんばりましたよ。』

ついさっき、息子に言葉遣いについて語っただけに迂闊に暴言は避けねばと頑張った母娘。無音でごくせんのクライマックスをぼんやり見ながら称えあった。

 

ごくせんも見終わり、寝る時間となったので子供たちはそれぞれ二段バッドへと寝に行った。いつもならここで、『おやすみ』というのだが、ごくせん直後だったので面白がって

『おやすみなさいやし、お嬢!!』

と、極道一家風に娘に言ってみると

『ママがそうゆうことするから、真似するんやろ!!!』

と、ごもっともな意見で怒られた。

『でも、これは丁寧な言葉やしさ…』

とかなんとか娘に言い訳していると、二段ベッド下段から息子がでてきてこう言った。

 

『あのさ、台所にカレー匂いに行っていい?食べへんから!匂いだけやから!』

 

 

母娘の想いはいつか彼に伝わるのだろうか…