安請け合い
『ママ、明日と月曜日お昼ご飯なくなったから、お弁当つくってな。』
今日の学校帰りの息子からの一言。
ここフランスでは、しばしば公共機関の職員がストライキを起こす。基本的には事前に告知をしてくれ、学校が一日休みになったり、短縮授業になったりとその都度内容が変わる。息子の話によると今回のストライキは学校の食堂の人たちによるものらしく、明日と月曜日のお昼は、家に昼食を食べに一旦帰るか、朝からお弁当をもってくるかの二択とのこと。
前日だろうと事前である、と言われるとそれまでなのだが、せめてもう少し早く知らせてくれよと思えてならない。とはいえ、思ったところでどうしようもない。腹をくくって早起きをし、お弁当を作るしか他はないのだ。そんな母の面倒くさい心なぞ知らずに、
『唐揚げ入れてな!僕と◯◯くんのも。あ、でも他の子も欲しがるから4個はほしい!』
と、気合いのいる唐揚げ弁当のオーダーまでもが追加された。幸か不幸か最近スーパーで鶏肉が安売りされていたので、冷蔵庫に唐揚げの材料が揃っていた。
『お肉ないから無理やわ~』
という逃げも出来ずに、唐揚げ弁当オーダーを受理する羽目となった。
早起き必須の明日のために早く寝ようと決めていたら、娘から
『ママ~。明日、社会の小テストあって全然わからんから教えて~。』
との依頼がきた。反射的に拒否をし、
『ちゃんと読めばわかるから、教科書を物語と思って読んでみ。』
と言うと、
『え~、読んだけど全然わからーん。』
との返答。前回のテスト結果がよかったとはいえ、彼女が社会を苦手なのはわかりきっていることだった。なので、渋々と彼女の依頼を受けることにした私はテスト範囲はどこだと彼女にきいた。喜びながら娘は
『ここ~。』
といいながら、中学社会の教科書を私に見せた。
テスト範囲は織田信長から江戸初期までだった。
『長くない?』
私が彼女に尋ねると、彼女は
『来週、中間テストってゆってたやん。明日はその練習にちょっと問題するんやって。ってゆうか、こないだから、中間テストやから教えてなって何回も言ってたやん。』
とのこと。
なんとなく、そんなことも言ってたような…と、考えならがも思考が凍りついていくようだった。バタバタしながら適当に安請け合いをしてた己を呪った。
前回のような騙しながらの作戦はかなり厳しそうなので、やっぱりそろそろ実は母は歴史が大の苦手だと白状するべきかとも考えた。しかし、現状引き受けてしまっているのも事実。フランスの学校食堂よろしくドタキャンするわけにもいかないので、かなり無茶な提案をした。
『とりあえず、夜のうちにテスト範囲確認しとくし、明日の朝早く起きて勉強しよ。だから、今日は教科書置いといて、早く寝とき。』
と。
こうなっては、娘が寝てる間に先に勉強しておこうという作戦だ。テスト範囲の確認なんぞ5分もあればできるというのに、母の話術に気づかぬ娘。
彼女は、嬉々として勉強道具を食卓に置いて、母を残してベッドへ向かった。上手く彼女をのせた気もするのだが、なんとなく、実は私が娘に上手くのせられているかもしれないとも思えてきた。
息子の唐揚げ弁当作りと娘の歴史のテスト勉強が待つ明日の朝、
なんたる無情な朝のダブルパンチ。
はたして乗り切れるだろうか。
いや、そんな心配よりもまずは何より歴史の勉強を始めねば。
Let's 勉強。がんばりまうす。
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