i-chi-tora’s ura-diary 一虎裏日記

"王様の耳はロバの耳"よろしく、徒然なるままに憎らしくも可愛い娘&息子の愚行を愛をもって暴露していくことを中心とする裏日記

姑息な母との勉強会

あやうく、今回も娘の『完璧』にだまされるところであった。ヤツの自信満々のあの態度ほど、怪しいものはない。

 

娘は公立の中学に通っているのだが少し特殊な中学で、試験に受かりさえすれば日本の教育も一部受けることがでるクラスに入っている。そこでは、フランスの一般的なカリキュラムに付け加え日本の中学一年国語と中学一年社会を授業でうけているのだが、こちらで産まれ育ち、近所のフランス人の子らと同じく近所の小学校へ通っていた彼女にとっては、日本の勉強こそがなかなかにむずかしい様子。日本の歴史なんて、未知の世界もいいところだ。勉強しだした当初なんて、

『時代ってなに?どういう意味?』

と家に帰ってきいてくるくらい、わかっていなかった。そんな彼女に昨日、日本の歴史の期末テストがあったのだ。

 

これは一昨日の夜のボディーシャンプーとの会話後のお話だ。

シャワーを終え浴室から出た後、彼女は呑気に

娘『ママ~ノート見ながら問題だして~。』

と頼んできたのだ。

ママ(私)『えー。自分でやりよ。』

娘『自分ではもうちゃんとやったから、たのんでるねん。完璧やで。』

 

といいながら、ノートをわたされた。開かれたノートを見るも、歴史が大の苦手な母は、説明もなく重要単語だけが書かれたノートじゃ、なにをどう聞いたらいいかわからなかった。

『ちょっと教科書かして。』

と教科書を見ていた娘から教科書をもぎとり、テスト範囲の最初のページをひらいた。ふと一つ前のページへとめくると、見慣れたページだった。(そういや、こないだはここまでしてたな…)と前回の中間テストの勉強に付き合わされたことを思い出した。

前回も、ヤツは母をテスト勉強にこき使ったあげく、『完璧。これで、もう大丈夫。』といってテストにのぞんで、結果はボロボロ。

『なんでやろなー。わかってたのになあー。まあ、クラスの最下位じゃなかったし、いいやーん』と、言っていたのだ。

 

このまま彼女の『完璧』を信じると前回の二の舞になるのは間違いないとも思え、このままではまずいと真剣に娘の勉強に付き合うことを決意した。決意したものの、こちらは歴史なんて勉強したのはもはや20年以上前。今さら後醍醐天皇だの後鳥羽上皇だの、わかるわけがなかった。『いい国(1192年)作ろう鎌倉幕府』くらいしか覚えてないといえるくらい、学生の時から歴史が苦手だった母。しかし、このことを彼女は知らない。これは重要なポイントだった。

普段フランス語がペラペラな娘に散々バカにされている母にとって、日本語での勉強は数少ない母が勝てる要素。この砦を守ることは負けず嫌いの私にとっては重要だったのだ。

くだらない自尊心を守るべく、

『ちょっとさ、このノート漢字間違い多過ぎ。これ、どう書いてるん?』

とかいいながら娘にノートを渡し、その間に持っていた教科書を読めるところまでマッハで読み全力で理解した。そして、

『で、ここやけどな、これはな…』と、さも知っていたかのように説明。マッハで読んだ部分を越えて説明が要るようになれば、

『ちょっと。まって。そこってさ…』と、一緒にノートと照らし合わせるフリをしながら再び教科書マッハ読み。そして、また再び知ったかぶり説明。これを繰り返し続け、全テスト範囲を知ったかぶりで説明しきった。中学生の時以上に真剣に取り組んだ母。テスト範囲すべて読みきるころには、期末テストを受けたいくらいテスト範囲の歴史をマスターしていた。そこからは、知ったかぶり通りこして、もう我が物顔と化して歴史について娘に語った。


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我ながら上手く一通り説明しきったと思い、時計を見ると夜0時を過ぎていたので、

『もう、寝なあかんな。』と少し眠そうな娘に促した。

しかし、娘から『んー。で、朝廷と幕府って何がちがうの?』

と延長戦へ突入となる一言が放たれ、結局一時前まで母娘で試験勉強をするはめになった。

翌日の昨日、娘は朝からテスト範囲を見直し今回も『完璧。』と言って学校へと出ていった。誰もいなくなった後、彼女の『完璧』に不安を覚え、急いで実家に電話をかけ

『ちょっと!朝廷は王族みたいなんで、幕府は武士の世界よな!?』

と、元小学校教諭をしていた父親に答えあわせを求めた。正解だとわかり、それから昨夜私が娘にした他の知ったかぶり説明があっていたかも確認した。父は私に、

『大丈夫やって!そんなん知らんでも困ることないし、大して要るもんじゃないやろ~。歴史なんてわからんでも生きていける。』

と言い放った。

まあ、そりゃあそうかと納得しながら、元小学校教師だろうが、そういやこの人も社会が苦手だったな、と父のことを思い出した。父がこれで私もこれじゃあ、娘がああなっても然りだと妙に納得ができた。

 

はたして今回の『完璧』はいかほどだろうか……