たとえ悪でも勝者が正義
散らかった部屋を一人片付けていると娘が帰って来た。『おかえり~』とだけ声をかけ、床に置かれてある洗濯済みの服を抱えタンスに片づけようとした。娘が上着を脱ぎ学校のカバンを漁ったあと、カバンをその辺に乱暴に放置して私に近づいてきた。
娘『おかえり?それだけ?それだけなん?』
ママ(私)『??ん?』
娘がニヤリと笑い、あれから数日たったことに私は気づいた。
マ『あ!社会のテスト返ってきたん!!?』
娘『フッフッフッフッ。』
『じゃじゃーん!(20点満点中)18点!!』
テストの答案用紙をさも自慢気に付きだす娘。
マ&娘『おおおおおお!』『おおおおお!』
『すごーーーーーいっ!!』『イエーイ!』
『すごくない!?』『すごいすごい!!』
『えらーい!』『ブラボー!!!』
『よくやったー!!!』
『イエェェーイ!!!』
両手を出しあい、バシバシと叩きあい、時折大きく片手を振りかぶりハイタッチをし、キャッキャッと小躍りしながら、どちらがどう言ったかわからないくらい限りなく少ない語彙力で母娘は感動を分かち合った。
たかがテスト。将来役に立つかどうかはわからない。されど、社会科のテストに関して昨年一年常にクラスで最下位あたりをうろついていた彼女にとってはこの快挙は大事件だったのである。ちなみに、彼女の前回の中間テストは10点で、もちろんクラス平均以下だったのだ。
日本で教育を受けてきた人にとってはピンと来にくいが、100点満点だと18点は90点、10点だと50点である。90点と50点じゃ優等生チームと赤点危うしチームとに分けられるぐらいだ。そりゃ小躍りもしたくなる。
大興奮をしながら返却されたテストを突きつけてくる娘。見ると点数の上に
『よくがんばりましたね!!努力がみられます』
と先生からの有難いお言葉が書いてあった。
お互い『がんばったよなー!!』『がんばった!』『がんばった!』と言い合いながら、私は己の姑息さを思い出しつつひそかに胸中で
『ほんまよくやった私!!先生ありがとう!努力しました!』
と100%自分宛てではない言葉を元に自分で自分をほめた挙げ句、学生の時とは比べ物にならないくらい先生の言葉を真摯にうけとり、(なんてよく見てる先生なんだ!)とすっかり社会科の先生を崇拝しだしていた。
娘『あーもう、めっちゃうれしいー。』
『◯◯君にも勝ってんで!すごくない!?』
と、クラスや先生方の間でも社会科が得意だと有名な仲良しの友人までもを引き合いにだしてき、彼の点数を上回った喜びを床で笑い転げながら私に伝えてきた娘。
娘『あー!もう、ほんまにうれしいっ!こないだ化学のテストでもバカにされたし!ざまあみろやわ!あはははははは!』
そこまで、比べずとも…と思いつつも、折角の彼女の喜びに水を指すのもどうかと思いつつ
マ『よかったやーん!で、◯◯くんは何点やったん?』
と聞いてみた。
娘『17,9!!』
『あははははは~勝った~!いえ~い!!』
マ『………』
なんてゆうか、◯◯君を応援したくなった…