i-chi-tora’s ura-diary 一虎裏日記

"王様の耳はロバの耳"よろしく、徒然なるままに憎らしくも可愛い娘&息子の愚行を愛をもって暴露していくことを中心とする裏日記

もう一人のサンタクロース


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クリスマスイブの夜中、友人宅でのクリスマス会が終わり遅くに帰って来た私たち四人は、食べて飲んで騒いでの後で疲れきっていた。子供達は家に着いて直ぐにパジャマに着替えて歯磨きをし、到着から10分と経たない内にベッドに入ってしまった。

私は食べ過ぎたのとほどほどに飲んでいたワインのお陰で、お腹がいっぱいで動きたくなく、何をするにも面倒くさい気分でいっぱいだった。

しかし、子供達へのクリスマスプレゼントを準備するという大事なサンタ業務がまだ残っていた。子供達が直ぐにベッドに入ったとはいえ安易に眠っていると決めつけるのは危険だと、イブの夜の子供は侮れないからと私たち夫婦はしばらく雑談でもしながら時間が過ぎるのを待った。ある程度経ってから、そろそろかと買っておいたプレゼントと包装紙を取り出しラッピングを始めた。ラッピングをしながら、2つのプレゼント(スイッチのコントローラーとソフト【ゼルダの伝説】)は、どちらがどっち用のプレゼントというわけでもないので、二人で仲良く使うように欧米のクリスマスの習慣にならってクリスマスツリーの下に宛名も書かずに2つとも並べて置いておこうという話になった。2つのプレゼントのラッピングを終え、まだ暫くは待った方がいいかと話をしていたら、主人が

『後は置くだけやから、先に寝てていいよ』

と私に言ってくれた。お腹がいっぱいでほろ酔いの私にはありがたく、それではとお言葉に甘えて私は先に休むことにしたのだった。

 

クリスマスの朝、前日の遊び疲れと夜更かしからよく寝ていると、大人達より先に起きた娘&息子に起こされた。

『ママ!クリスマスプレゼントがないっ!!』

『枕の横に何もないっ!』

とのこと。

寝ぼけながら、

『え~ツリーの下とかにもない?プレゼントは枕元かツリーの下にあるもんやで。』

と、すっとぼけながら答えた。

『あー!!』

『あったー!!!』

と、娘&息子の歓喜する声が聞こえた。さらに、

『ママのもある!』

『ほんまや!これママのやん!』

『絶対ママの!!』

と続いたので、

『ええ!!???』

と、慌てて飛び起きた。

クリスマスツリーの横で、見つけたプレゼントを囲んで子供達が座っていた。子供達の真ん中を見ると見覚えのある赤い包装紙で包まれたプレゼント2つと、全く包装されていない見慣れない木箱があった。

『ああっ!!!』

開けてみると、私の大好きなものが入っていた。


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なんとも私好みの渋いチョイス。

アダルティーなクリスマスプレゼントを頂いた。

 

 

 

 

 

 

 

子供たちもサンタクロース


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我が家では、クリスマスのプレゼントといえば、サンタさんから子どもたちへのプレゼントだけではない。

 

いつからだったか、毎日頑張って仕事にいってくれているのにパパにサンタが来ないのはかわいそうだということで、クリスマスには子供たちがサンタクロースの真似事をしてこっそり主人の枕元にプレゼントを置くようになったのだ。今年も娘&息子と例年のごとく、主人へのプレゼントを探しにいった。

 

いよいよクリスマスイブも翌日と控えた昨日、街はクリスマス準備の人の波がピークに達していた。歩きにくいと思うくらいどこへ行ってもすごい人混みで落ち着かない。そんな中、またしてもプレゼントが決まらず娘&息子&私の三人は人の多さに疲れが出てきていた。

『ちょっと、一旦ここから出よう。』

と、提案してプレゼント探しを中断して先にスーパーへクリスマスのご馳走の材料を買いに行くことにした。

クリスマス直前ということで、いつものスーパーのラインナップもフォアグラやシャンパン、丸焼き用の鶏類といったクリスマスパーティー用の食材が数多く並んでいた。そんなスーパーもやはり人でごった返していたのだが、予め何を買うか決めていた我々は、一刻も早くその人混みから抜け出ようと、人を避けながらさくさくと買い物を進めた。

次々に買い物かごへご馳走の材料を入れていきながら、こんなにたくさん持てるだろうかと、かごの重さが辛くなってきた頃、娘が

『ママ!見て見て!ほら!』

と、お肉コーナーの端にあった冷蔵庫内を指差した。

『ええ!!?』『ええ!?』

と私も息子も驚き、その食材を冷蔵庫から取り出してみた。

箱の裏に貼ってあるラベルを確認し、どうやら本物のようだと三人で驚いた。驚きの中、誰が言い出したか、

『これ、パパのプレゼントにしたらいいやん!』

と意見が出た。枕元へは置けまいが代わりに手紙を置いて、冷蔵庫にプレゼントがあると書いて置けばいいかと、全員一致で、それはいい!名案!バッチリだ!と決まり、買い物かごへそれを一つだけ入れた。それから残りの買い物リストに書かれていた食材を探しまわり、お会計へとレジの列に並んだ。

日本のスーパーと違い、フランスの大体のスーパーにおいて、客が買う商品をかごから出してお会計レジの手間に並べていかなければならない。私たち三人も溢れんばかりの食材をかごから取り出し、順番にレジ台に並べていった。前の人の会計が済み、我々の順番が来て次々と商品がスキャンされていった。すると、我々の後ろに並んでいた初老のムッシュ(フランス人男性)が

『ええ!?これはおいしいのか!!?』

と、レジ台にある主人へのプレゼントを指して驚きながら聞いてきた。さらに、その後ろにいたマダムまでも

『えー。日本人はこんなのも食べるのか?』とか

『日本にもこれはその辺にいてたりするの?』

と聞いてきた。

レジの店員さんもスキャンしようとその商品を手にとり、まじまじみながら

『本物ねー。初めて見たわ!おいしいの?』

と尋ねてきた。

もちろん我々三人は

『そんなの見たのもはじめてだ!』

『日本で食べない!ってか、聞いたこともない!』

『我々も食べたことがない!』

『日本でも、その辺に普通に生息してることはない!』

と、笑いながら答え、最終的に

『それは料理人である主人へのクリスマスプレゼントです。』

と伝えると、盛り上がっていた三人のフランス人は

『あー!なるほど!!』と笑いながら納得していた。

お会計が済み、鞄に商品を積めてから去り際に、後ろの三人のフランス人へ向かって

『ありがとう!さようなら!ステキなクリスマスを!!』

と言うと三人が口々に、

『さようなら!良いクリスマスを!』

『そして、ステキなワニ料理を!!』

と叫んでくれた。

笑いながら、三人でお礼を行ってスーパーを後にした。


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Crocodile(クロコディル) = 意味 : ワニ

主人への今年のクリスマスプレゼントはワニの肉となりました。

喜んでくれますように。

 

 

皆様、メリークリスマス

素敵なクリスマスを☆

 

フライングバカンス

遂に冬期バカンスが始まった。

四六時中家にいることが予想される娘&息子に対抗するために企てたご馳走昼御飯計画も失敗に終わり、十分な英気を養えないままのスタートとなった。

フランスでは、本来なら公立の教育機関は土曜日はお休みなのだが、娘の通っている中学校は公立にして日本語の授業を受けることができるため若干受ける授業数が多いので、土曜日も午前中だけ学校に行かねばならない。世間でバカンスが始まりだした昨日の土曜日とて、例外なく学校があった。

しかし、学校があるとはいえ午前中だけで、おまけに翌日からはバカンス。テストもなければ大した授業もないだろうと私は気楽に構えていた。バカンス中の娘&息子との戦いはそりゃもう大変だが、一方で通学に合わせて早起きしなくていいという素敵なオプションがついてくるので、身構える反面嬉しくもあるのだ。

そんな思いから、後は土曜の朝だけ早起きして娘を送り出せばいいのだと金曜日の深夜、気を楽にして眠りについていたのだ。

 

土曜の朝、目が覚めると既に娘が起きていた。彼女は着替えが終わり食卓の横で学校の用意をしていた。テーブルにおいてあるチョコパンを朝食に食べていいかと聞かれたので、お好きにどうぞ、と伝え、寝ぼけ頭で娘の向かいの椅子に座った。時計を見ると8時15分だった。チョコパンと水を朝食にとりながら、娘に携帯を見せてほしいと頼まれたので、彼女が食べ終わると、私は携帯画面に裏日記のウィンドウが開いてないことを確認してから彼女に携帯を渡した。

他の学校がどうなのかは詳しくはわからないのだが、娘の通う中学では時間割や宿題、テストの点や学校からの連絡事項まで、学校から推奨されてるプロノットというアプリ一つで全てが確認できるようになっている。曜日によって授業の開始時間が違ったり、時間割の変動や休講などもよくあるので、娘はほぼ毎日、私の携帯で学校の連絡や時間割、宿題なんかを確認するのだ。

向かいに座る娘は、私から携帯を受け取り、そのアプリで自分が今から受ける授業と宿題を確認していた。

マ『今さら見んでもいいんちゃうん?』

娘『……まあ、そうなんやけどな。』

前日にも見ていただろうにと、そこまで気にするこてはないだろうと言い、娘から携帯を返してもらった。裏日記の存在をひた隠しにしている私としては、なるべく長時間携帯を家族に触られないよう細心の注意を払っているのだ。携帯を受け取り画面を見ると、学校のその日の時間割のページが開かれたままだった。よしよし他(日記)は見てないなと安心し、画面に表示されていた一時間目から四時間目までの授業内容を見て

『ほら、別に昨日と変わってないやん。』

と、彼女に言った。

『…うん。まあ、そうやねんけどな。』

と、言いながら娘は出かける用意を始めた。

8時半を少しまわる頃、いつもの平日なら息子も学校へ行く時間だが、その日学校がない彼はよく寝ていた。一人まだ授業がある娘を玄関まで応援しながら見送っていると、

『あのさ、ママ。今もう一時間目始まってる時間やからな。』

と、言われた。さらに、

『時間割見ても気づいてなかったやろ?ねぼけすぎな。いってきまーす。(笑)』

と言って、マンションの階段を降りていった。

『……。』

たしかに、娘の学校の一時間目は8時からだったと思い出した。彼女は既に大幅に遅刻していたのだ。

やってしまった、、、と思ったが、そもそも起きなかった彼女も同罪だと開き直り、食卓へと戻った。

食卓にある娘の使ったお皿とコップを下げながら、そういえば何で彼女は牛乳を飲んでなかったのだろうと手元の空になってるコップを見て思った。

『!!!』

冷蔵庫を開けるとあるはずの牛乳がなかった。

暖房の横においてある鞄を見ると、中に前の日の夕方に買った牛乳(要冷蔵)があった。

 

『………。』

 

 

どうやら、英気が足りず私の頭は既にバカンスに入っていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンタクロースの苦悩

街中がキラキラとクリスマスイルミネーションで輝いている12月のパリ。

あちこちのショーウィンドウやアパートのベランダにサンタがいたり、スーパーの店員さんもサンタ帽やトナカイのカチューシャを着用したり、花屋さんの店先では歩道にまで売り物のクリスマスツリーのもみの木が溢れんばかりに並べられている。

どこもかしこも、見渡せばクリスマス一色になっている。

そんなクリスマスの雰囲気を世間の方々と同じく私も楽しんでいたつもりが、どうやら、まんまと文字通り『師走』マジックにはまっていたようだ。あっちへこっちへと動き回っていて私は大切なことを忘れていた。

 

昨日の朝、主人が出勤準備をしながら、今年のクリスマスは連休がとれそうだという話をしてくれた。仕事の都合で普段めったに連休などとれない主人なので、それはよかったと喜び、クリスマスはどう過ごそうかと話し合った。そして気づいたのだ。私たちは子供たちへのプレゼントを買っていないということを。

あと数日でクリスマスだというこんな直前に、そんな大事なことに気付いた二人は出勤10分前の玄関にて『何を買う?』『いつ買いにいく!?』という緊急会議を急遽行った。今週末から冬のバカンスが始まるので、子供たちも朝から夜まで家にいることになるのだ。そんな中、こそこそとばれないようにプレゼントを探しにいくなんて不可能もいいところであった。主人が仕事の隙をみて、休憩時間中に買いに行こうかとも提案してくれたのだが、そんな短時間で買い物ができるほど、クリスマス直前のパリは甘くない。

フランス人にとってクリスマスは日本人のお正月レベルに大切な日で、皆、実家へ帰り家族とともに年に一度のご馳走を食べ、プレゼントを渡し合ったりしながら楽しく過ごす日なのだ。そんな大切な日のために、ご馳走の材料を探し歩く人もいれば、実家へのお土産や家族へのプレゼントを探す人もいる。この時期は街中にクリスマスのための買い物に出かけている人で溢れかえっているのだ。そんな中で、何にするかも決まっていないプレゼントを買いに行くなんて休憩時間が何時間あっても足りないだろうと思い、

『じゃあ、私が今日探して買っとくよ。』

と、主人に宣言すると、

『じゃあ、お願い。』

と返事をし、彼は仕事へと向かっていった。

 

ここ最近、週末問わず連日予定がつまっていた私にとって、実は昨日はようやくゆっくりできる貴重な一日だったのだ。午前中に荒れ果てた部屋を片付けた後はクリスマスツリーを出してから、マルシェへ行き大好物の生牡蠣を買い、一人で昼御飯にそれらを白ワインと共に食べながら、連日の疲労回復と翌日から始まる冬のバカンスに備え英気を養おうと企てていたのだが、すっかり忘れていたサンタ業務のおかげで予定が大幅に狂うこととなった。しかし、大人げない上にあきらめの悪い私は、どうしてもお昼の癒しのご馳走を諦めきれず、なんとかマッハで動いてマルシェの閉まる午後1時までにプレゼントを二つゲットして、それから生牡蠣を買いに行けるんじゃないかと、高速で昼までの行動を考えた。

まず主人が出勤後、世間の店舗が開き出す10時までは部屋の片付けをしたり洗い物をしたりしながら何を買いに行くかを考えようと決めた。しかし、考えても考えてもプレゼントの内容が思い浮かばなかった。なぜなら、娘&息子(&主人)が最近一番欲しがっているスマッシュブラザーズなるニンテンドースイッチのソフトは、姉夫婦がクリスマスプレゼントとして、既にこちらへ郵送してくれていたからだ。おそらく子供たちは自分達が欲しがっているソフトをサンタさんが届けてくれるであろうと期待していたので、それ以外にあれが欲しいこれが欲しいとは言ってなかったのだ。まして、日頃から外出が多い娘&息子はさほどの物欲もなく、数年前の息子のクリスマスプレゼントのリクエストなんて『タクシー』だったくらいだ。まさかのリアルタクシー。息子曰く『あんな便利なもん他にない。』とのことだった。そんな猛者相手に簡単に名案が浮かぶはずもなく、あれこれと携帯を見ても何がいいかわからず、どうしようもなくなった私は実家へSOSの電話を掛けた。

両親はかつて小学校の教諭をしていたので、既に退職したとはいえ長年子供たちとは接してきていたはず、まして父に関しては未だに近所の小学生たちに勉強を教えに行っているので、最近の子供たちの喜びそうな物を知っているはずだと思ったのだ。電話で用件を伝えると、母は

『自分の子供なんやし、見てたらわかるやろ。』

と相手にしてくれず、

(じゃあ、タクシー用意できるのか?)と思いながら父とチェンジを指示。

父はちょうど最近、自身が勉強を教えている子供たちとクリスマスに何が欲しいかという話をしたらしかったのだが

『残念やけど参考にはならへんで。最近の子は皆、スマホか現金が欲しいんやって。』

とのこと。

それは困る、何かないのかと詰め寄るも、全く案を出してくれず。かつては私のサンタ役をやってただろうにと、元サンタのくせにと嘆いたのだが、私がもらった最後のサンタからのプレゼントがタワーレコードの金券5000円分だったことを思い出し、アテにする相手を間違えたと気づき、すぐさま電話を切った。電話を切った後、既に午前11時を過ぎていて、片付けが終わってない部屋をほっておいてプレゼント探しへと出発した。

スポーツ用品店に行ってみたり、洋服をみたり、おもちゃ屋さんに行ってみたりもしたのだが、どれもピンとこず。どのお店でもレジ前では長蛇の列ができており、並んでいる人たちはさながら世間に潜むサンタだな、とか思考が現実逃避を始め出した頃、主人からメールが届いた。

『スイッチのプロコントローラーとゼルダの伝説(スイッチのソフト)はどう?』

『!!』

テレビゲームの類は本当はあまり増やしたくないのだが(どの口が言う…)、確かにそれは喜ぶ。というか、主人も喜ぶ。クリスマスだし普段から外出気味の子供たちだし、それもいいかと思い、一路ゲーム屋さんへと向かった。プロコントローラーなるものは見つかったもののソフトが見当たらず、仕方なくコントローラーだけのために列に並びお会計となった。ゲーム屋さんを出発し、急いでFNACという家電や書籍、おもちゃにCD、DVDとあらゆるものがあるお店へと向かった。ゲームコーナーで無事ゼルダのソフトを見つけ、お会計へと向かった。会計レジの前はそうそうお目にかかれないくらいの長蛇の列ができていた。あらゆるものがおいてあるので客層、客数が桁違いに多かったのだ。10台以上のレジがあるにもかかわらずのその状況に、唖然としつつ仕方がないから並びだした。時計を見ると午後2時半。マルシェがすっかり終わっている時間だった。マルシェに牡蠣を買いに行けなかったショックに、長蛇の列などどうでもよくなり、脱力しながら列が進むのを待った。

無事に二つのプレゼントを購入し、家に着いたのは3時半。あと少しで子供たちが帰ってくる時間だった。

『ぎりぎりセーフか…』と、オレンジジュースと1ユーロもしないインスタントのフォーを食べながら安堵した。


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サンタクロースもなかなかに難しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

異文化交流②

『これ持って行っていいんやんな?』

と娘がハンガーに掛けられていた黒いチャイナ服を手にしながら私に尋ねてきた。

マ(私)『…どうぞ。アイロンはかけておいたよ。』

娘『ありがとう。』

 

前日の夜更かしが祟って、朝から眠くて仕方がない私は、パジャマのまま半ばぼーっとしながら娘と話していた。娘は午前中にスポーツの授業があるらしく、既にスポーツ用の黒いズボンをはいて上に前開きのフードのあるトレーナーを着ていた。朝食をとり終わると彼女は学校の用意をしながら

『黒のバレリンどこに片付けた?』

と私に尋ねてきた。

バレリン(ballerine)とはバレリーナが履くような、バレエシューズによく似た形をした平べったい女性用の靴のことで、冬場に履くには寒そうに見えるので私は彼女の黒いバレリンを靴の箱の中に片付けていたのだ。

娘『今日の発表会で履くから。』

マ(私)『へ??あのチャイナ服に?バレリン?』

娘『うん。先生ができたらそうしてって言ってはったから。』

 一瞬、なんでチャイナ服(中国文化)にバレリン(欧州文化)なんだ?と思ったのだが、よくよく想像力を働かせると、ブルースリーが履いていたようなカンフー靴とバレリンが酷似していることに気が付いた。よくよく先生はアジア文化全般が好きなのだろう、アジアにおける国境がないことになっているなと、少し可笑しくなった。しかし、そう考えるとズボンは何でもいいのか?と、気になり娘に聞いてみたが、ズボンは何でもいいみたいだから、娘はそのままスポーツ用の黒いズボンを履くとのことだった。

『じゃあ、またあとで。』

と、娘は黒いチャイナ服とバレリンを学校カバンにつめて出かけて行った。

昨日は私も娘の学校で行われている文化行事についての打ち合わせで、2,3時間後には彼女の学校へと行かねばならなかったのだ。娘に続いて、息子と主人を送り出した後、眠気に負けて二度寝へと戻らないよう気を付けながら、出かける用意をして娘の中学へと向かった。

 

お昼休みの時間になって私のいる教室に娘が会いに来た。

娘『ママ!発表会で、みんなレギンス履くんやって!だから発表会が始まる前にレギンス持ってきてな!レギンス!発表会、見に来るんやろ???』

マ『レギンス?なんでレギンス?チャイナ服の下にレギンス?』

娘『?そやで?うちにあるやん。レギンス。ユニクロのとか。タイツみたいなん。』

マ『わかってるよ。レギンスやろ。レギンスの上は?』

娘『上?あの黒いチャイナ服やで?だから、レギンスだけ持ってきてって。』

マ『違うやん。レギンスの上には何もスカートみたいなの履かへんの?あのチャイナ服にレギンスだけって変やろ。』

娘『はあ?何ゆってるんママ?みんなそうしてるって。ってゆうか、レギンスだけの子いっぱいいるやん。とにかく、レギンスだけ持ってきてな。』

 ささっと母とのやり取りを終わらせ、彼女は友達たちのいるほうへと向かっていった。

 レギンスを頼まれた母は、脳内でレギンスについてのあらゆる情報をひっぱりだした。すると確かに、フランス人の女の子たちの中にはレギンスだけを履いている子も結構いるなと思えてきた。それどころかそういえば最近、日本人はレギンスをタイツのような感覚で履くがアメリカではレギンスはレギンスオンリーでストレッチスリムパンツのように履かれているのだと書かれていたツイッター記事があったなと思い出した。なるほど、言われてみれば娘はそういった欧米女子文化の渦中にいるので、レギンスオンリーだろうと平気で、まったく違和感がないのだなと納得がいった。

しかし、彼女の主張に納得がいこうがチャイナ服&レギンスに納得がいったわけではなかった。なんせチャイナ服だ。まして、そのチャイナ服はワンピースのように長い丈でもなく、形的に言えば前開きのパジャマのようなフォルムをしていた。欧米女子がオシャレでTシャツやトレーナーとレギンスをシンプルに着こなしているのとはわけが違う。私は、日本の芸人さんの江頭2:50さんにチャイナ服を着せた姿を想像し、『あかんやろ!』と、瞬時にそう思えた。ともすれば公序良俗に引っ掛かるくらい可笑しな格好のような気がした私は、発表会にレギンスをもっていってやるかどうか、ひたすら悩んだ。しかし、かなり悩んだものの、やはり皆と一緒がいいかと娘の頼み通り、これはいいのか?と思いながらもレギンスを持っていくことにした。

夕方になり、鞄に言われた通りレギンスを入れ、息子とともに娘の発表会へ向かった。レギンスを持ってきたものの、道中の私の意識は相も変わらず江頭氏を忘れられずにいた。しかも、合唱をするからにはある程度な人数もいるし、まして男の子もいるだろうとさらに想像を深め、大人数の江頭氏を思い描いたりもした。発表会中に吹き出すことを我慢出来るかと不安になりながらも、想像で時折笑ってしまってる母に息子は『なに?ママ?どうしたん?』と少し怪訝そうだったので、

『なんもないよ?上手に歌ってくれるかな?』と、誤魔化した。

娘の学校につき発表会の会場にむかっていると、数人の黒いチャイナ服を来た女子生徒を見かけた。彼女らは私の想像の江頭氏とは全くの別物だった。

娘は背が高いほうで大体の女生徒は娘よりも身長が低い。なおかつ最近の子は手足が長いからか、短いパジャマ丈のチャイナ服も腰のあたりにベルトをつけて着ているとかわいい短いワンピースに見えたのだ。なるほど、チャイナドレス的な感じかと、これはかわいらしくて吹き出すこともないなと、一安心し会場へ向かった。会場に入ると舞台に50人を超えるであろう黒いチャイナ服の子供集団が既に練習をしていた。大人数なうえ、性別も身長も人種も様々だったので、服装の微妙な着こなし具合など、ぱっと見た感じだと気にはならなかったが、よく見ると男子は皆レギンスではなく黒のズボンで、女子は小さい子たちは主にレギンスで、背の高い子たちはレギンスの子もいれば、普通に黒ズボンの子もいるという具合だった。

ちょうど娘を見つけたので、スポーツズボン姿の娘にレギンスを持ってきたことを伝えたが、周りの子たちを見てか『やっぱり、このズボンでいい。』と拒否された。しかし、彼女にとってはそのほうが似合うだろうと私も思ったんで、持ってきたことを悔やむことはなかった。

しばらくして発表会が始まる合図が鳴ると、ざわついていた舞台いっぱいの黒チャイナ集団は3列にきれいに並びだした。並び終わると指揮者であるフランス人の音楽の先生が現れた。アジアを愛してくれているであろう彼女もまた、生徒たちと同じ黒レギンスにチャイナ服姿だった。

 

伴奏に続き四部合唱が始まった。

圧巻の出で立ち。

黒いチャイナドレスの指揮による黒いチャイナ服チャイナドレス集団の『ふるさと』

 先日の体育に続き、これまた異文化交流を考えさせられる見事な演奏だった。

 

あれ以上印象に残る『ふるさと』を聞くことはそうないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眠れない夜

当初の予定では、数時間前には日記を書き、それからゆっくりと他の方々のブログ記事を読ませてもらおうと考えていたはずが、息子リクエストのガトーショコラの制作に思いの外、時間がかかってしまい予定が大幅にずれ込んだ。

 

フランスの幼稚園、小学校では生徒の誕生日をクラスでお祝いしてくれる。学校や先生によって多少異なるだろうが、幼稚園ではなるべく誕生日に近い日に誕生日会を開いてくれ、小学校の中、高学年になると、勉強することが増えてくるので、同じ月の生まれの子たちはまとめて一回でのお祝いとなる。どちらの場合も先生から事前に『誕生日会を開くので、ジュースやケーキ、飴等を当日持ってきてください。』と保護者に連絡がくるのだ。

我が息子の誕生日は11月の末だったのだが、彼の担任はパワフル豪快な性格に加え、わりとズボラなため、面倒だからと12月の半ばも過ぎた明日に、この2ヶ月間に誕生日があった生徒たちのお祝いをまとめてすると言い出したのだ。

おかげで、誕生日なんぞとっくにすんだと思っていた私は、完全にそんな予定は予想しておらず、慌てて再びケーキやらロウソクを用意するはめになったのだ。

ケーキといっても、日本のいわゆる生クリームたっぷりのバースデーケーキは、食べにくさや汚すことを懸念されてか、学校イベントでの持参は認めらておらず、ほぼ皆、クリームがなくて食べやすい子供たちに人気のガトーショコラを持っていく。そのせいかスーパーの製菓コーナーには、混ぜて焼くだけで出来る簡単ガトーショコラの元という類いの商品が多く並んでいる。

しかし、ここはフランス。そういった類いの商品ははっきり言って不味い。なので、わたしはいつも出来うる限り手をぬきつつも、きちんとガトーショコラを1から作っているのだ。

チョコを包丁で細かく刻んで…なんてことはせず、パッケージに入ったままメキメキと手で割り、そのまま破片と化したそれらのチョコをザザッと器にいれ湯煎にかけたりと、出来る限りの手間をはぶき高速で作り上げたのだが、そのままホールのガトーショコラじゃ、誕生日ケーキとしては華やかさにかけるだろうと、ホワイトチョコでJoyeux Anniversaire (お誕生日おめでとう)♪という文字の飾りを作ってみた。しかし、久々にそんな作業をしたので、悪戦苦闘となってしまい、かなりの時間をかけてしまったのだ。

時間的にも体力的にももう無理だと、日記を諦め寝ようと片付けていると、そういや、娘からも頼まれ事があったと思い出した。

娘は中学校で週に一回、授業とは別に合奏を習っているのだが、明日は放課後にその合奏の発表会があるのだ。担当する音楽の先生が日本好きのフランス人の方らしく、発表する歌も『ふるさと』を初めとする、いわゆる日本らしい古き良き日本の歌とのこと。

そんな発表会用に、皆でお揃いの衣装を先生が用意してくれて、今日、娘がその衣装をもって帰ってきたのだ。

『明日これ着るから、アイロンかけといてな。』

と彼女は私に頼んでいた。

 

その事を思い出した私は、面倒くさくて眠たい気持ちと戦いながら、机に置いてあった透明の薄いビニールに入っているその衣装を手にした。

『………。』


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なぜか真っ黒のチャイナ服が登場。

なぜ?

なぜここでチャイナ服?

チャイナ服で『ふるさと』?

色々な謎(ツッコミどころ)のお陰でどんどん目が覚めていった私。

アイロンをかけながら、チャイナ服で『ふるさと』を歌う子供たちを想像して笑ってしまった。

 

せっかくだからと、日記に綴った。

只今、午前3時半。

 

 

 

母、ウニになる

1000文字くらいを打ち込んでから、やはり違うなとデリートキーを長押しした。自身のあまりの機嫌の悪さに思考が安定しない。日記を書いて気持ちを整理しようとパソコンに向き合ったのだが、書けども書けども楽しくなく、読んでみてもいまいち頭に入らないときた。機嫌の悪さに加えてある種のアレルギー反応のように体中がざわざわして落ち着かない。

間みつを氏の言葉の一つに『人間だもの』という言葉があったが、今の私は『人間だって動物だもの』と先に続けたくなる。人間だって動物だもの、懐ける人間とそうでない人間をかぎ分ける。時には天敵認定だってする。器用なようで意外とデリケートなのだ。

常識人気取りのいい人顔の人たちに

『人の為とかいて【偽】ってよむんですよ』

とか

『お世話ではなく下世話ですよ』

とか、なんなら

『聖人君子くそくらえ』

とか

言ってやりたい。

嗚呼、思考がウニのように刺々しい。

 

 

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外より中身のほうが好きなんだけれど