i-chi-tora’s ura-diary 一虎裏日記

"王様の耳はロバの耳"よろしく、徒然なるままに憎らしくも可愛い娘&息子の愚行を愛をもって暴露していくことを中心とする裏日記

老若男女恋愛合宿

『僕はロマンチストじゃないんですよ。カッコいいわけでもないし、もう若くもないし、王子様でもない。もちろん白いタイツもはいてないし、白い馬にも乗ってないしね。でも、こんな僕なんだけど、ロマンチストな貴女とこれからもずっと一緒に幸せに過ごしたいと思っているんだ。だから結婚してくれる?』

 

8才の花子(仮)ちゃんが10才の息子に好意を抱いているというかわいい情報が流れる音楽合宿中、大人達だけでワイワイと賑わう夕食時の食堂にて、突然一人の初老まぎわのムッシュ(イタリア系フランス人男性)が立ち上がり皆の前に出てこう告げた。

ついさっきまでムッシュがいた席の横に座っている同じ歳程のマダム(イタリア系フランス人女性)がものすごく驚いた顔をして見せたが、すぐに笑って泣き出した。

子供のかわいい恋愛事情で既に微笑ましい空気が流れていた音楽合宿にて、なんと大人本気恋愛事情が公開プロポーズという事件を起こしたのだった。

予期せぬ突然の公開プロポーズに、私たち一同は全員一瞬固まった。しかし、泣き出したマダムを見て状況が把握できるや否や、なんて幸せな瞬間だと直ぐ様感動が広がり、あっという間に食堂内は祝福モードへと切り替わった。

聞けば二人は離婚歴がある者同士で、長年一緒に住んではいたけれど、入籍には至ってはいなかったらしい。お互い歳も歳だし一緒にいることをはっきりしようと決めたらしく、教会とはいかないまでも、せっかくだから大勢の前で誓いたいとムッシュがこの公開プロポーズを企画したとのこと。

私にとって、プロポーズの場面に立ち会うなんてことは生まれて初めてのことだった。あまりの予期せぬ事態に、立ち上がったムッシュの言葉を一瞬何かの劇のセリフか、余興でも始めたかと思ってしまったくらいだったのだが、彼女に向かって照れもなく穏やかに笑う彼の表情と笑って涙する嬉しそうなマダムを見ていると、うまく言葉が出なくなるくらい感動できた。幸せな場面に立ち会えて、ありがたくも幸せをお裾分けしてもらえたような気分にさえなれた。

『おめでとう!』『おめでとう!』『お幸せに!』とひとしきり皆で二人の結婚に盛り上がり、賑やかな夕食は遅くまで続いた。

 

夕食後、私が娘に会いに合宿施設内にある子供達用の部屋へと行くと、プロポーズをされたマダムが食堂にいなかった子供達にも結婚の報告をしにきていて、合宿に参加してる子供達と嬉しそうにきゃっきゃとはしゃいでいた。幸せそうな彼女を見ていると、こっちまで幸せは気持ちになれ、その夜はそのまま幸せなとてもいい気分で眠れた。

 

翌朝、9時過ぎに朝食をとろうと食堂へ行くとほんの数人の大人しかいなかった。既に早起きして朝食を済ませた大人もいれば、まだ起きてきていない大人もいて、子供達は全員朝食を終えて既に外で遊び回っているとのことだった。「大人は昨日騒いだしなあ、子供は遊べる時は早起きしても遊ぶわなあ…」などと思いながら朝食の焼きたてクロワッサンを美味しく食べた。

『ママー。おはよう!ママ起きるん遅いで!』

と言いながら息子が食堂に現れた。

「あ、そういや息子も花子ちゃんに好かれてるとかやったな…なんかこの合宿は幸せな合宿やったなあ」とふと思い、フフフとほくそ笑みながら息子に『おはよー。』と返事をした。

息子『今日さ何時に起きたと思う?』

ママ(私)『?わからん。ママさっき起きたし。7時半とか8時?今は皆で遊んでるんやろ?』

息子『ブー。答えは6時。6時半から○○さん(カワイイ大人女性チェロ奏者)と二人でチェロの練習しててーん。』

ママ『ええ!!?????あんた、何してるん!!?』

息子『昨日から○○さんと約束しててんもん♪一緒に朝練習しようって♪さっきまで二人で練習しててんでー♪』

マ『……。』

 

 

幸せ音楽合宿最終日、

こんな男はやめておけと本気で花子(仮)ちゃんへと語りたくなった。