i-chi-tora’s ura-diary 一虎裏日記

"王様の耳はロバの耳"よろしく、徒然なるままに憎らしくも可愛い娘&息子の愚行を愛をもって暴露していくことを中心とする裏日記

行先は

息子が遠足へ行った。

他のフランスの小学校がどうかはよくわからないので一概に言えないのだが、息子が通っている小学校を見ていると、フランスの公立小学校の遠足というのはクラス単位で企画されているように思う。クラス単位で企画というと、クラスで遠足日程や順路をずらして各クラス別々となり遠足へと向かうくらいのものだろうと思われるかもしれないが、そうではない。なんと各クラスによって、行先、回数、時期、テーマ、全てにおいて異なるのだ。

どうしてそんなことになるのかというと、どうやら最初の発案の時点から担任の先生に一任されているようなのだ。例えば勉強大好きお外嫌いなインドア派先生のクラスの場合、一切の遠足を企画されず、一年中遠足にいかないで終わるといったこともある。逆に、勉強ぼちぼちお外大好きアウトドア派の先生のクラスは一年の間に何回遠足行ったら気が済むんだ!?ってくらい遠足へ行ったり、二週間にもおよぶヨット研修や林間学校なども企画してくれたりする。不公平すぎてよく問題にならないなと思うのだが、どうやらこれがフランス式のようで、特に保護者が怒ったりと問題が起こったこともなく、担任の先生の違いで子供たちの年間スケジュールが変わるのはとても普通のことなのだ。

そんなちょっと当たりはずれ感のクラスからなるフランスの小学校に通う息子の現担任の先生は、学校一の超アウトドア派で暇さえあれば遠足に行くタイプだ。

 

数日前の連絡帳に「もうすぐ遠足にいきます。行先は…」と、数件の遠足の行先と日時が書かれていた。その一件に『フィルハーモニーパリ(パリ管弦楽団コンサートホール)でオペラ鑑賞』という大人ですら羨ましくなる内容の遠足があったのだ。大の音楽好きコンサート好きの息子からすると聖地とも言える場所への遠足ということで、もちろん息子は舞い上がり

フィルハーモニーいくねんでー!フィルハーモニー!』

と遠足までの数日間、嬉しそうに何度も連呼していた。

 

そして遠足当日は、もちろん朝から浮かれて浮かれて学校へと向かっていった。

「今頃オペラなんか見てるのかーいいなーフランスの小学生ー」

などと思いながら日中を過ごしていた私は、夕方になり息子が帰ってきてすぐに

『どうやった?楽しかった!?』

と聞いてみた。すると

『楽しかったよ!でも今日は音楽聞くのじゃなくて建物見ててん!』

とのことだった。てっきりオペラ公演は急遽中止にでもなり、館内見学にでもなったのかと

ママ(私)『そうなん?オペラなくなったんかな?それは残念やったね。でもあの建物めちゃくちゃかっこよくてママはすごい好きやから、建物見学にママも行きたかったなー。』

息子『すごい楽しかったよ!めっちゃ建物見てたん!』

息子の嬉々とする様子をみて、音楽がなくとも楽しめたようでそれは何よりだったなと思えた。

 

夜になり、珍しく休日の主人とともに四人で夕食をとっていると息子が

『今日の遠足はなー(地下鉄)8番線と6番線で行ってんで。10番線と6番線でもよかったのにな。その方が早いし乗り換え近いと思うのに。』

とつぶやいた。その瞬間、同時に他の三人の動きが止まった。

主人&私&娘『んんん?』『なんでよ?』

『6番?』『8から6?』

『6じゃないやろ?』

息子『え?なんで?8に乗って、6のトロカデロで降りたで?』

娘『なんでよ!おかしいやん!コンサートのとこって駅そこじゃないやん!もっと遠くやん!』

マ『トロカデロにフィルハーモニーはないよ。全然違うとこやで。どこいったん?』

主人『トロカデロで降りて広場あった?エッフェル塔も大きく見えた?でもフィルハーモニーもみたん?』

息子『うん見たよ。トロカデロで降りたよ。広場もエッフェル塔も前にあったし、フィルハーモニーも全部見た。』

聞けども聞けども息子の発言内容がかみ合わなく、息子以外の三人で協議となった。弱電車オタクな息子が自分の降りた駅を間違えているというのは考えられなく、供述的に息子の行った先は間違いなくフィルハーモニーパリがある駅ではないトロカデロという全く違う場所の駅だという結論に至ったのだが、ではなぜ息子はフィルハーモニーを見たと言ってるのかという謎が残った。

主人『駅についてどっちに行った?階段上がってからどうした?右に行った?左?』

息子『左』

主人『そこからどうした?』

息子『まっすぐ行って広場の向こうの建物にいったよ。』

マ『ああああ!わかった!そこ建築博物館のとこやん!!上の階に模型あるわ!!』

息子『?』

マ『真っ赤な壁の部屋があって、これぐらいの大きさのフィルハーモニーパリの建物が机においてあったやろ?』

息子『そうそう!!フィルハーモニー全部ぐるって見れたで!!!』

娘『あああ…。』

主人『……なるほどな。』

 

どうやら、遠足内容が建築博物館の見学という事実から『フィルハーモニーパリ(模型)見学』へと息子の脳内にて都合よくクローズアップ変換されていた模様。

息子の連日のはしゃぎ様と遠足日程の多さから、一家全員で息子の遠足先勘違いを起こしていた上、息子のご都合変換能力により危うく事実を見失うところであった。

 

連絡帳を確認したところ、フィルハーモニーパリへは5月初旬に行くとのこと。

次は間違えないよう、どこかにメモして張っておくとしよう。