愛犬ではないはず
『…………?』
足元に大きな塊がある気がした。
明け方、暖かな布団に埋もれて寝ていると、足に何かが当たった。まだ現実世界に戻りきれていない頭ながら、足元に何かしらの塊があることに気付いた。夢現で何があるかなど気にすることもなく、当たらないよう足を布団の端の方へと寄せるだけよせ、気にせず眠り続けた。
どれくらい経ったかわからないが、再び足元に何かが当たった。寝心地が悪くなり体を小さく丸めた。
再びどれくらい経ったかわからないが、またしても足元に何かが当たった。かなり身体を丸く小さくしていた私は
『もー!なにっ!!?』
と半ギレになりながら、ガバッと上体を起こし、自分の足元のほうを見た。
私の足元にはなぜだか息子がいた。息子はまるで大型室内犬かのように私の足元近くに入りこんで眠っていた。
『犬かっ!!』と呟き、自分のベッドへ戻るように促そうと息子を揺さぶったが、息子は全く目も開けず、嫌そうに鬱陶しそうな顔をしながら眠り続けた。
しかたがないので、息子を起こすことを諦め、再び枕の近くで丸くなって息子と寝床を半分こした。
小さく丸くなりながら浅い眠りについていると、
『ママ~、朝ご飯つくって~。』
と娘が起こしに来てくれた。
時計をみると朝七時過ぎだった。数時間前からの息子の侵入により寝苦しくてまともに眠った気がしなく、いつもの数倍面倒に思いながら起きることにした。身体を起こし足元を見るとやはり変わらず大型犬のようなに眠る息子がいた。人の貴重な睡眠を邪魔しやがって~っと恨めしく思いながら、息子をほって台所へと朝食をつくりにむかった。
三人分のサンドイッチを食卓に並べると、起きてこない息子をおいて先に娘と二人でサンドイッチを食べることにした。明け方の息子の所業を娘に愚痴りながら朝食を食べた。娘と二人での朝食を終えてから、いい加減そろそろ息子を起こさねばと私は自分の寝床へと息子を起こしに向かった。
母の布団で気持ちよさそうに寝続けている息子を見て、寝不足気分の私は心底うらやましくなり、もう一度息子の寝ている私の布団に入り込んだ。その瞬間、
『もう!!』
『あっち行ってよ!一人で寝てんねんから~!』
と、目を閉じたままの息子に超絶鬱陶しそうに叫ばれた。私はガバッと起き上がり
『誰の布団やー!!!』
と叫んだ。
が、息子、母を無視。
あまりの理不尽具合に、全力で息子を揺さぶり起こしにかかった。
『おきや!!』
『そこママのとこやしな!』
『あんたんとこちゃうしな!』
『いつまで寝る気よ!!』
『もう起きやな間に合えへんで!!』
と言いながら布団に隠れる息子をゆするも、全く布団から出てこようとしない息子。かくなる上はと、
『じゃあ、サンドイッチ、ママが全部食べるからな!!』
と叫び、揺さぶるのをやめた瞬間、
『たべるよ!!』
と叫びながら布団からガバッと息子が現れた。
いつもの息子の起き方とはいえ、餌につられるその様に
実家の愛犬を重ねてしまった。