Looks like オカン
フランスの小学校や中学校の勉強はやたらと細かいところまで勉強することがある。
教科や先生、学校によるものかもしれないが、私が思うに、日本のように低学年で大筋を学び学年が上がるごとに詳細を足していくといった勉強ではなく、フランスでは最初からわりと専門的な言葉を用いていき、学年が上がっても、少しの詳細が増えるだけで復習をしつつ進めていように思う。
娘がまだ小学校の時に、彼女がプリントに描かれている人体模型のような絵の横に、上腕二頭筋だの大腿骨だのと骨やら筋肉やらの名前をフランス語で書き連ねていたのを見たときは、まるでお医者さんのようだと思えた。
ここ最近、娘は中学の生物の時間に循環器系やら心臓の働きやらを勉強しており、少し前に、娘がそのことを私に告げてきた。私はその時内心、『ああ、余計なことを…』と思ってしまったのだった。
私には家族性高脂血症というやっかいな持病がある。子供の頃からコレステロール値が高く、さらに遺伝性であるから本人の中性脂肪が低かろうと痩せていようと血のドロドロ具合には関係がない。そういう問題があるので、私は毎日薬を飲んで生活をしているのだ。
子供たちにもそのことは既に説明済みで、娘&息子も知っているのだが、漠然とした【知っている】という知識が、ここ最近の生物の時間のせいで血管の問題に対する意識が恐ろしいほどに上がってきた娘にとっては【知っている】から【解っている】になってきたのだ。血管や心臓の問題の知識を日々増やしていく娘はお小言のようにその内容を説明してくれる。もう、はっきり言って『うるさい』といいたくなるくらいだ。
娘『ママ知ってる!?こう、血の通るパイプがあったらな、みんなの血はサーッて中を流れるのに、ママの場合はこのパイプの中に色々べたべたこびりついてて、血がこーーーーんな隙間からしか流れてないねんで!知ってた!?』(ジェスチャー付き)
母『知ってるって!!わかってるし!気をつけてるやん!!!』
娘『でもよく薬飲むの忘れたって言ってるやん!!』
母『たまにやん!だいたいは飲んでるよ!』
娘『心臓の周りの血管とか詰まったら大変やねんで!!心筋梗塞とか狭心症とか!!』
母『わかってるって!』
と、所々の専門用語をフランス語でしか話せないくせに、二言語をごちゃ混ぜにしながらこんな風に熱弁されたり、夕食に肉類が続こうもんなら
『お肉続いてるけどいいのーーー??』
とかゆわれたり、
『生物の先生もママの話したら『それはよくないねえ』ってゆってたで』
とかゆわれたりで、もう
『オカンかっ!!!』
と娘に言ってしまいそうになる。
本当に口出し具合が心配性の母親のようで、心配してくれるのはありがたいのだが、こちらもいい年した大人で、ある程度は食生活も気を付けているし、まして主治医に散々いつも色々言われているので、もうそっとしておいてほしいのだ。
そんな風に娘に説明するも、日々の生物という悪しき授業にて、娘の健康マニア化は進んでいき、なおもぶつぶつと言ってくる娘。私としては一刻も早く違う単元の勉強へと変わってくれと節に願っている。
今朝、朝食後に薬を飲もうかといつもの薬を手に取り、ふと違和感を感じた。手元の薬を見ると、なんと裏面に日付が書かれていた。
『飲み忘れへんようにっ!!』
ヤツの声が聞こえてきそうだった…