警戒警報発令
茹でたソーセージを二本とサラダを皿に盛り付け、ケチャップとマスタード、バター、それにホットコーヒーを並べ、ついさっき買ってきたバゲットを半分こした。
ホットドッグにしたり、ソーセージをおかずにしてサラダとパンを付け合わせとしたりと、それぞれが好きなように食べれるようにというスタイルがいつもの月曜日の主人との昼食だ。
カチャカチャと時折ナイフとフォークの音がするなか主人が私に尋ねてきた。
主人『知ってる?ブリーチのことを、ものすっごい細かく分析してるブロガーさんがいるって。』
私『ううん。しらん。そんなすごいの?』
主人『ちょっとアドレス送るし見てみて。すごいから!』
とのこと。
【ブリーチ】とは、私と主人がかつてはまっていた週刊少年ジャンプで連載されていた死神の青年を主人公とする少年漫画である。数年前に完結したのだが、主人と二人(と実家の父親も)で漫画本を買い集めるくらいにはまっていて、よく物語の内容について二人でそれぞれの考えを言いあっていたのだ。そんな我々であるので、考察内容をブログに書くほどの方とは一体どれ程深く考えられているのだろうと、わくわくしながら、主人が送ってくれたメッセージを開いた。
そこには、ものすごく見慣れたアドレスがあった。
『○○○○○.hatenablog.com』
なんと、はてなブログにおられるブロガーさんだったのだ。主人からはてなブログの記事が送られてくるとは予想もしていなかったので、一瞬にして身構えた。一体どういった経緯で主人はこの記事に行き着いたのかと高速で考えた。
主人『な、すごい細かく書いてはるやろ!?すごいよな、この人!』
私『すごいな!ここまで考えるって相当頭がいい人なんやろうな!』
とかなんとか感動を表す反面、はっきり言って気が気ではなかった。
そりゃそうだろう。なんせ私のこの日記はあくまで裏日記。ほとんどの人間にこの日記のことを明かしていないどころか、メインの登場人物である子供達や主人には特に極秘なのだ。『王様の耳はロバの耳ー!』と王様の横で叫ぶ馬鹿はいないはずだ。
主人と二人、ブリーチに関する記事をお互い携帯画面で開いて会話をしている間、はてなブログアカウントを有している私の携帯画面の右端には私自身のアイコンが現れていたのだ。チラッとでも見られたら秘密裏に進めている私の裏日記がおじゃんになる危険があり、私は絶対的に私の携帯画面が見えないよう細心の注意を払った。後ろめたさ全開で胸中では警告音がピーピーピーピーピーと鳴っているかのようだった。
そんな私の胸中を知らない主人はさらに一言ありえない言葉を発した。
『あんまりすごいからさあ、俺、読者登録したもん。』
私は確かめるため脳内で復唱した。
(読者登録 したもん)
(読者登録したもん?)
(読者登録だぁ!!????)
『読者登録……って、このはてなブログのアカウントないとできないんじゃないの?ブログ書く人じゃないとないんじゃないの?』
と、必死の思いで平然を装いながら聞いてみた。
主人『ブログは書いてないけど、アカウントはすぐに作れるねんで。だから、アカウントはあるねん。』
(アカウントはあるねん。)
(アカウント ハ アルネン)
(アカウント ハ アル…)
主人のその一言は、私の脳内警告音をピーピーピーどころか、ピピピピピピピピ!というけたたましい音へと変化させた。
そう、あろうことか、なんと主人がはてなブログのこのフィールド上にいるのだ!その後、さらに平然を装いながら
『へー、そうなんや~』
とかなんとか、すっとぼけながら会話をしたのだが、『私もやってみよかなー』とか『どんなんなん見せて』とか言ってみようかとか、もうそれこそ色々考えたのだが、最終的に下手を打たない方がいい気がしてきて何一つはてなブログについて言及することをやめた。
万一、何かに勘づいてバレていたら、さぞかし私は滑稽だろうよと考えたり、いや、そもそもバレるはずがないだろう、と考えたりしながら無口になっていく自分に、なるほど浮気をすると無口になるしか術がないのかと、かつての主人の行動に納得がいった月曜日の午後であった。
今、うてる対策として、とりあえず私だと一瞬でばれるであろうアイコンを変えるべきか、さらには今属しているあらゆるグループから抜けるべきかと悩んだのだが、せっかく読者の方々もいてくれるのだし、グループもアイコンも私なりに気にいっているので、やはりこの体制は維持していこうと思った。今後、読者の方が増えると嬉しい反面、『これはまさか主人では…』と考えてしまうだろうが、まずはとりあえず『はてな砲』とやらが来たらシャレにならないので、被弾しないようにひたすらに祈るしかない。
なにやってんだかなー。
追伸
万一、私一虎のアイコンがある日突然変わった場合、『あ、この人本気で"逃げ"に出たな。』とご理解いただけると幸いです。