吉宗記念日
フランスの現地の中学にて日本の社会科を習っている娘。そんな娘と新年早々、今月ある中間テストに備えて歴史の勉強を教えてやるという約束をうっかりしてしまっていた私は、この一週間、途中でインフルエンザでダウンしたものの、それ以外の時間に隙を見つけては中学歴史の勉強に勤しんでいたのだ。
元々、社会科は大の苦手の私は、なんとか娘に教えてやれるようにならなければという一心で、織田信長やら徳川家やらを必死に勉強した。
実のところ、己の勉強くらい己でやってくれよと、心底思っているのだが、娘はフランス生まれのフランス育ち、塾に通ってるわけでもなく、自宅で日本のテレビ番組をみれるわけでもない。そんな環境で育っている彼女は日本の風習や文化に疎いのは無理からぬ事で、そんな知識が必要ならば頼れるのは私しかいないということは理解しているのだ。
おまけに勉強をしたくないというわけでもなく、むしろ負けず嫌いな性格ゆえか勉強する意欲は溢れているので、そんな娘相手に教えてやらないわけにもいかないのだ。
たまに我が家での勉強法を耳にした人に、
『お母様が教えてられてるなんて、熱心ですね』
とか、
『親子で勉強するなんて、すごいですね。』
とか言われるのだが、そんな方々の期待を裏切るようで申し訳ないのだが、私は特に勉強ができるわけでもなく、一言で言うと、ヤツがやりたいと言うから渋々協力してるというだけである。
そんな感じで、今回も渋々ながら勉強した。渋々と言えどやるからにはやる。恐らく現役中学生に負けないくらいガチで勉強をしただろう。途中、
『あ、ママ~、テスト範囲に中世ヨーロッパも入るんやって~。』
と言われ
なんて無茶ぶりだ!と、いっそ知らなかったフリして放棄してやろうか!とも思ったのだが、社会科教科書の漢字を読むだけで必死の彼女を見ているとそんなわけにもいかず、夜な夜な一人でもくもくと勉強をした。
私自信が理解できたところはコピー用紙に内容をまとめて彼女に説明をした。眠気と戦いながらの私のまとめプリントは、娘から『字がひどすぎてよめへん!』と苦情が多々きたものの、解りやすく彼女には好評だった。
母娘二人で数日間に渡り歴史を語り合い、いざ今日テスト当日の朝が来た。早起きして食卓にて母が作ったプリントを見て勉強している娘の様子がおかしかった。
娘『ママ……しんどい……。』
マ(私)『!!!!えええっ!?』
これはまずい!と、慌てて体温計を娘に渡した。
娘『……38,9度』
マ『あかんやーーーん!あああぁぁぁぁ!』
娘『テストは昼からやし昼には……』
マ『どう考えてもいかれへんから!寝とき!』
そう言うと、娘はかなりつらかったのか、すぐさまベッドへと戻っていった。病気では仕方がないのだが、が、が、しかし、何故に今日寝込むかあぁ~?せっかく二人でがんばったのにー!と思えてならなかった。もう、いっそ代わりにテストを受けたかった、いや、代わりと言わずに私にテストをさせてほしいくらいだったのだ。テストを受けなくて成績が悪くなるとかそんなことよりも、何点とれるかと二人で楽しみにしていたので残念でしかたがなかったのだ。恐らく娘も同じ気持ちだったのだろうか、
『たぶん、月曜日一人でテスト受けれると思う。前のテストの時も、休んでた子がそうしてたはずやし。』とベッドの中にいながら私に言ってきた。9度近くありながら今日のテストを受けたそうにする娘を見て、つくづくこれは誰に似たのかと不思議になった。残念がる彼女が少しかわいそうになってき、
『(病気に)なっちゃったもんはしゃーないから、しっかり寝て治し。せっかく勉強したし、治ったら時代劇でも一緒に見よ。』
と伝えた。
娘『時代劇て何?』
マ『時代劇…江戸時代のお話のドラマかな。』
そう説明し、再度彼女にゆっくり休むよう促した。
夜になり、熱も少しさがり夕食もペロリと平らげ元気そうにしていた娘が
『一日中寝てたし、さすがにもう暇!』
と訴えてきた。
まだ、治ったわけではなかったのだが、残念会と称し息子もいれて動画サイトでかつてのお茶の間の人気時代劇【暴れん坊将軍】を見た。
『これこれ!この人、実は八代目の将軍!!徳川吉宗!』とか
『え、この悪そうな人が勘定奉行?で、こっちは藩のえらい人かっ!?』
とか、
『江戸城~!!』
などと言い合い、最後の戦いのシーンでは三人で歓喜した。
テスト勉強は点数という結果は残らなかったものの、30数年生きて来て今までで一番、暴れん坊将軍を楽しませてくれた。歴史の勉強も悪くないなと思えた今日であった。
次は【水戸黄門】を見る予定。