i-chi-tora’s ura-diary 一虎裏日記

"王様の耳はロバの耳"よろしく、徒然なるままに憎らしくも可愛い娘&息子の愚行を愛をもって暴露していくことを中心とする裏日記

幼き日のロマン

義兄が遊びに来てくれた。

 

主人の兄である彼は、数カ月前に勃発した離婚問題で傷心旅行にパリに来るとばかり思っていたのだが、どうやらそれは私の取り越し苦労であったようだ。彼は思った以上に元気にしており、聞くところによると、奥さん(アメリカ人)に(アメリカの実家に)家出をされてから仕事を休職し、数週間タイへ一人旅に出かけたらしい。そして、タイでは愉快な旅行客やタイの人に出会いながら、ひたすら大好きなタイ料理を食べて過ごしたとのこと。さらには今回の渡仏は少なからず仕事の関係でもあったらしく、そのくせこちらに到着して暫くしてからすぐに奥さんに会いにアメリカまで行き、ついでにちゃっかりカジノにも寄ってきたらしい。

『シャカリキ元気やん。』

これが彼に会って、今日までの経緯を聞いた後の私の心境であった。取り越し苦労ではあったものの、相変わらずな彼の様子を見れて安心したのも事実だった。

私、主人、義兄は少し似ていて、三人とも共通して『ちょっとそこまで行ってくる。』の『ちょっと』の範囲が若干広いように思う。残念なことに三人ともけしてお金持ちではないのだが、にも拘らず我々は少しの時間とあぶく銭を手にすると、あっちの国へこっちの国へといってしまう。学校から帰ってすぐにお小遣いをもって外に出て行ってしまう小学生とさほど変わらないかのような三人なのである。

今日は残念なことに主人は仕事で不在だったのだが、うちの子供たちとも遊びたいからと学校がない今日、そんな彼はやってきてくれたのだ。義兄にとって初めての渡仏だったのだが、住所を見ながら迷うことなく我が家に来た彼は、

『ほい、これ。』

と、日本のお土産でも、先日行ったアメリカのお土産でもなく、うちの近所のスーパーで買ったビールとおやつとコーラを私にくれた。

さすが兄ちゃん…もはや現地人…

と思えてしまった手土産を受け取りながら変わらぬ彼との再会を喜んだ。

再会を喜んだのは似たもの同士の大人だけでなく、彼のことが大好きな娘&息子もだった。狭い我が家で四人でそれぞれの近況を伝えつつひとしきり再会を喜び合ったあと、今日は何をするかと考えた。

彼方へうろうろ此方へうろうろ行くくせに、観光スポットをくまなく調べ、網羅するような旅行をしないマイペースな大人二人+娘&息子。おまけに外は雨なうえ大規模デモのおかげで交通機関がかなり閉鎖されていた。そんなメンツと状況で大した案も思い浮かぶはずもなく、結局、息子の提案から家でニンテンドースイッチをすることになった。

私は子供たちとたまにやったりしていたので、ある程度はいろいろ知っていたのだが義兄はスイッチは初めてとのことで、子供たちが持ってるソフトの説明を最初からしてくれた。私も詳しくわかっていなかったので、一緒にふむふむと聞いていると

『あとは、この昔あったゲームもできるみたいやで』

 

と、コントローラーを触りながらテレビ画面を指し息子が言った。すぐさま

兄&私『ファミコンやん!!』

   『ああ、ドクターマリオ!!』

   『スーパーマリオも!!』

   『ゼルダもある!!』

   『なつかし~!!』『平ぺったい画面~!!』

 

   『ああ!!!マリオ3!!!

 

と久しぶりに目にした懐かしのゲームに兄&私は盛り上がり、得意なスプラトゥーンをやりたがる娘と、これまた己の得意なマリオカートをやりたがる息子を差し置いて、大人二人で

『ちょっとだけ!!』

と嘆願し、懐かしのマリオ3をやりだした。

あまりの懐かしさに浮かれる兄&私。

『あそこを叩くとハテナがでる!』とか

『そこは上に飛んで行ったら1UPキノコがもらえる!!』とか

『そのカメはそっちに飛ばしたらあかんやん!!』とか

大人気ないを通り越し大人でなくなっていた二人。

そんな二人が楽しむ見たこともない平ぺったい絵のゲームを大人のように上手くやりたがる娘がいた。最初の数回こそ私と兄が連続でやったのだが、途中からは大人が一回やると娘が三回やるといった理不尽な法則でコントローラーがまわされたあげく、初心者の娘が動かすたどたどしさ全開のマリオがもどかしくてしょうがなかった。

ゲームをしながら義兄と、『最近のゲームは攻略本もあるし、本どころかネットで簡単に攻略方法を調べられ、何なら動画で中継まで見れるよな。』『プレイ内容をセーブできるし、ゲームのクリアに対する感動具合が全然違うよな。』といったことを話しだした。さらに二人して、

『うちらが初代ファミコンでマリオ3を1UPキノコを大事にしながらやってた頃とはちがうな。』

『ああ、たしかに!セーブできへんから、こっそり電源つけっぱなしで学校行って帰ってきて、続きやろと思ったら線抜かれてた時のあの残念具合とかないよな!』

『ああ!わかる!つけてたはずが!ってやつ!』

『あと、オカンの掃除機があたって途中で画面固まったり!』

『ああ!!めちゃわかる!!!ゲームの横で片付けされたら怖かった!』

『あんなんが8面までやらなあかんかってんもんなあ。』

『マリオのクリアとか、ある種、子供のロマンやったよな。』

『よな!!わかる!!裏技駆使してやったりしたもんな』

『ってか、クリアできた記憶ない。』

『え、どうやったけ………』

 

と、熱くファミコンに対するロマンを語り合いすっかり気分がマリオ3を進めていくモードになっていた。

しかし我が家の『ブレない男』と定評の息子。そんな我々の横で念仏のように『マリオカートがいいマリオカートがいい』をひたすらに連呼。

なんとか言いくるめつつ、初心者の娘に主導権を握られたままなんとか2面まで辿り着いたものの、結局、これ以上は息子もかわいそうだと判断し、私と兄は泣く泣くマリオ3のENDを選択した。

 

マリオカートを始めるまでの間

兄『俺、これ日本返ったら買ってしまいそう…』とつぶやくので

私『え?私、今日の夜やってしまいそうやで…』とかえした。


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ロマンよ再び。