不幸の手紙じゃありません。
4月30日夕方、ピロンピロンと続いて携帯のメッセージ音がなった。
日本時間で5月1日午前0時を越えたので新年号『令和』となったことを祝い、
『おめでとう!』『令和になったよ!』
等々友人達からメッセージを頂いたのだ。
携帯電話で日本のニュース記事を見ても、日本全国の記念行事の様子やお祝いしている様子を伝える記事が多く、ついこの間お正月があったのに、まるでまたお正月がきたようだなと、少し愉快に思えた。
腰痛をこらえて行ったバイトが無事に終わり、自宅へ帰って娘&息子と
『令和になったねー。なんかお正月みたいよなー。』
と話しをした。
夕食後、再びピロンと携帯電話のメッセージの音がした。誰からだ?と思いながら携帯電話を手にとりメッセージのアプリを開いた。
なんと、送られてきたメッセージの差出人はすぐ数メートル近くにいる娘からだった。
娘の名前のメッセージボックスを開いて笑ってしまった。
まさかのチェーンメール。
翌朝、さらに娘の友人から同じチェーンメールを頂きノルマ30人へ。
こんな大人になってまで、こんなものを受けとるとは思ってもいなかったが、内容が内容だけにとても嬉しくなった。
メッセージ送信ノルマ30人は大変なので、読者の皆様に見て頂いてクリアとしようと日記に載せさせていただきました。
これからもどうぞ宜しくお願い致します。
一虎
老若男女恋愛合宿
『僕はロマンチストじゃないんですよ。カッコいいわけでもないし、もう若くもないし、王子様でもない。もちろん白いタイツもはいてないし、白い馬にも乗ってないしね。でも、こんな僕なんだけど、ロマンチストな貴女とこれからもずっと一緒に幸せに過ごしたいと思っているんだ。だから結婚してくれる?』
8才の花子(仮)ちゃんが10才の息子に好意を抱いているというかわいい情報が流れる音楽合宿中、大人達だけでワイワイと賑わう夕食時の食堂にて、突然一人の初老まぎわのムッシュ(イタリア系フランス人男性)が立ち上がり皆の前に出てこう告げた。
ついさっきまでムッシュがいた席の横に座っている同じ歳程のマダム(イタリア系フランス人女性)がものすごく驚いた顔をして見せたが、すぐに笑って泣き出した。
子供のかわいい恋愛事情で既に微笑ましい空気が流れていた音楽合宿にて、なんと大人本気恋愛事情が公開プロポーズという事件を起こしたのだった。
予期せぬ突然の公開プロポーズに、私たち一同は全員一瞬固まった。しかし、泣き出したマダムを見て状況が把握できるや否や、なんて幸せな瞬間だと直ぐ様感動が広がり、あっという間に食堂内は祝福モードへと切り替わった。
聞けば二人は離婚歴がある者同士で、長年一緒に住んではいたけれど、入籍には至ってはいなかったらしい。お互い歳も歳だし一緒にいることをはっきりしようと決めたらしく、教会とはいかないまでも、せっかくだから大勢の前で誓いたいとムッシュがこの公開プロポーズを企画したとのこと。
私にとって、プロポーズの場面に立ち会うなんてことは生まれて初めてのことだった。あまりの予期せぬ事態に、立ち上がったムッシュの言葉を一瞬何かの劇のセリフか、余興でも始めたかと思ってしまったくらいだったのだが、彼女に向かって照れもなく穏やかに笑う彼の表情と笑って涙する嬉しそうなマダムを見ていると、うまく言葉が出なくなるくらい感動できた。幸せな場面に立ち会えて、ありがたくも幸せをお裾分けしてもらえたような気分にさえなれた。
『おめでとう!』『おめでとう!』『お幸せに!』とひとしきり皆で二人の結婚に盛り上がり、賑やかな夕食は遅くまで続いた。
夕食後、私が娘に会いに合宿施設内にある子供達用の部屋へと行くと、プロポーズをされたマダムが食堂にいなかった子供達にも結婚の報告をしにきていて、合宿に参加してる子供達と嬉しそうにきゃっきゃとはしゃいでいた。幸せそうな彼女を見ていると、こっちまで幸せは気持ちになれ、その夜はそのまま幸せなとてもいい気分で眠れた。
翌朝、9時過ぎに朝食をとろうと食堂へ行くとほんの数人の大人しかいなかった。既に早起きして朝食を済ませた大人もいれば、まだ起きてきていない大人もいて、子供達は全員朝食を終えて既に外で遊び回っているとのことだった。「大人は昨日騒いだしなあ、子供は遊べる時は早起きしても遊ぶわなあ…」などと思いながら朝食の焼きたてクロワッサンを美味しく食べた。
『ママー。おはよう!ママ起きるん遅いで!』
と言いながら息子が食堂に現れた。
「あ、そういや息子も花子ちゃんに好かれてるとかやったな…なんかこの合宿は幸せな合宿やったなあ」とふと思い、フフフとほくそ笑みながら息子に『おはよー。』と返事をした。
息子『今日さ何時に起きたと思う?』
ママ(私)『?わからん。ママさっき起きたし。7時半とか8時?今は皆で遊んでるんやろ?』
息子『ブー。答えは6時。6時半から○○さん(カワイイ大人女性チェロ奏者)と二人でチェロの練習しててーん。』
ママ『ええ!!?????あんた、何してるん!!?』
息子『昨日から○○さんと約束しててんもん♪一緒に朝練習しようって♪さっきまで二人で練習しててんでー♪』
マ『……。』
幸せ音楽合宿最終日、
こんな男はやめておけと本気で花子(仮)ちゃんへと語りたくなった。
The お調子者
インターネットの電波もか細い田舎につき、耳を済ませども隣近所の話し声はおろか、車や工事現場の音もない。聞こえてくるは鳥の声と練習中のオーケストラ曲だけである。
宿泊先のご近所さんからの差し入れということで、昼間からロゼワインをご馳走になり、いい気持ちになったので、皆が午後の練習へと向かうと同時に一人暖炉のある応接室へ枕と毛布を持ち込んで、腰痛を労るという名目を掲げソファーでごろごろ寛いだ。
こんなに静かで穏やかな場所で、一度も台所に立つことなく食事ができた上、眠気にまかせて寝てしまえるなんて、今日という一日はなんて素晴らしい日なんだろうとそんなことを思いながら、そのまま気持ちよく眠ってしまった。
小一時間ほどうとうととしていると、バタバタと慌ただしく軽い足音が近づいてきた。辺りがあまりに静かなため、よく足音が響いて聞こえた。誰か来たかと仕方なくソファから起き上がると、ガチャンと勢いよくドアが開いて息子が現れた。
息子は女の子を一人連れていた。他の子供達も大人もいなく、聞けば二人は今皆が練習している曲には参加しないから二人だけで少し休憩しに来たとのこと。なんだ全員休憩というわけでもないのかと、私は再びソファにごろんとなり、またも昼寝を再開しようとした。
息子は一緒に来た花子(仮)ちゃんという名前の2つ歳下の女の子と二人で私の昼寝のすぐ横で仲良さそうに話をしだした。小さな子供がする仲の良さそうな話し声はうとうととしている私にはなんとも聞き心地がよく、黙って二人の話し声を聞き続けた。
息子『8歳やんな?誕生日いつ!?』
花子『1月13日。早生まれ。』
息『そうなんや。もうじゃあ終わっちゃったんや。』
花『うん。お正月になったらすぐに誕生日になるの。』
息『ふーん。僕のパパも1月生まれやで!
僕は11月の22!二人とも1が多いな!』
????
息『13やとうちのパパより先に誕生日やな!僕は22やからもっと後やけどな!』
?????
花『そうなんだ。11月だとまだまだだね。』
息『うん。でも11月になったら22日はすぐやで。』
!!!!!
ママ(私)『ちょっと!』
花『?』息『?どうしたん?』
マ『あのさ、いつから22日生まれになったん?あんた24やろ、誕生日。』
息『あー。ほんまや、間違えてたわ!笑!』
眠気もあるし気のせいかと、つっこむことなくほっておこうかと思ったが、デレデレしながら三回も違う誕生日を連呼されるとさすがにつっこまずにはいられなかった。
花『えー。誕生日忘れてたん?笑』
息『ははは、間違えただけやん。24やわ。笑』
このデレデレ男がぁ!っと心の中で息子につっこみ、すっかり目が覚めてしまった私。そんな私に気を使ったのか二人は
『かくれんぼしてくる!』
といって応接室を飛び出していった。
再びうとうとしようかと一人ソファで静けさを楽しむことにした。鳥の声と音楽が微かに聞こえる中、気持ちよくうつらうつらとしだしたところで、再びバタバタ…バタバタ…と足音が響いてきた。かくれんぼで相手を探し回ってるのかとボンヤリする頭で考えた。
息子『はるかちゃーん!あれー?』
『はーるーかーちゃーん!!』
………。
『はるかちゃーん!どこー!?』
ガチャン!
『ママー!はるかちゃん見んかったあ?』
ママ『あの子の名前は花子ちゃん!!!!一文字しかあってないわぁっ!!!』
息子『!!?』
静けさあれども息子のボケにより日常へとカムバック。
合宿期間、息子のハイテンションメーターが振り切れ中。
何故に彼はああなのだろうか…
誰がための合宿か
一昨日から激しい腰痛に見回れ、昨日は歩くことも座ることも辛く、うっかりペンでも床に落とそうもんなら身体が曲げれず自力で拾えず、くしゃみや咳がでようもんならズキーーーンっと腰に痛みが走り
『いったーーーいっ!!!』
と叫ぶ始末。
なのに、今、子供6人を引き連れてブルゴーニュ地方へと向かう特急電車に乗っている。
今日から2泊3日、ブルゴーニュにて音楽教室の合宿があるのだ。保護者の出席は任意なのだが、娘はまだしも、息子一人で彼の身体ほどの大きさのチェロと2泊3日の宿泊用意と譜面台やら楽譜を持って地方へと行くのはさすがに無理だと判断し、私も参加することにしたのだ。そのため、他の保護者の方が引率しない子供たちをまとめてブルゴーニュまで引き連れていくというお役目を仰せつかったのだ。
ここまで聞くと、『あらあらまあまあ一虎さん大変ねえ』と思われるかもしれないが、合宿中の2泊3日、子供たちは朝から晩まで6月のコンサートに向けてのオーケストラの全体練習で、さらに保護者なしの子供達が参加するため現地には子供お世話係までスタンバイしてくれているのだ。すなわち、母は用なし、することなし。さらに、参加と言えどただの付き添い、レッスン代が要らないので宿泊費が破格に安いときてる。
もはや母にとっては、行きと帰りの使命を除けば、ワインの産地のど真ん中にて2泊3日3食おやつ昼寝つき格安グータラ合宿であり、さらに、参加者にワインの作り手さんがおられるため、産地直送ワインの差し入れ&産地価格でワイン購入というオプションまでがついてくるのだ。
『いつも、お子さん連れて大荷物で大変ねえ。』
とか
『うちの子まで見てもらって、すみません。』
とか
『子供達を見てもらってありがとうございます!』
等々、色々皆さん労ってくれて申し訳ないのだが、この合宿は私にとってはもはや子供達の合宿ではなく、母のための合宿なのである。
正直、悶絶絶叫するほどに腰痛がひどくてつらいのだが、これはこれで、私の下心が強すぎたてバチが当たったとも思えてならないぐらいである。
世の中なかなかうまい話はないなと思う。
なんてことを思っている私の隣で
『うちのママがさ~。』
とか
『えー!うちもー!あれ、すっごい嫌じゃない?』
とか、子供目線の家庭内愚痴トークが繰り広げられいていて、
さらに息子は一人、車内トイレの前にて同じ合宿に参加するフランス人女性とデレデレ会話中ときている。
三者三様楽しげ合宿(腰痛ですけど!)はじまりはじまり…
侵食される国語学習
今日の午後、食卓にて息子が日本語の勉強をしていた。
娘&息子はここフランスで生まれ、近所のフランス人子供達と同様にフランスの幼稚園小学校に通い育ってきたのだが、両親家族が日本人である故に何時なんどき日本に帰ることになるかわからないという考えと、日本にいる家族や友人との交流などを考慮して、日本語の勉強も時折するようにしているのだ。
娘に関しては、一昨年から日本語の勉強ができる公立中学に通えるようになったので、今となっては私が教材を用意して塾のように国語を教えるといったことはなくなったのだが、息子に関しては今現在どこかで特別に日本語を習っているわけでもないので、バカンス中や時間がある時に、私が日本の小学生の教材や教科書を元に日本の国語を教えているのだ。とはいえ、頭の中の8割が音楽でできてるような息子なので、本来なら今年度から日本では5年生なのだが、いまだ小学一、二年生の国語をやっているくらい、のんびりとしたペースでの勉強だ。
そんな息子が小学二年国語の勉強中
『ママ、これ、わからんねんけど。』
と、きいてきた。
『どこ?見せてみ?』
【問「つぎの文で、したことには◯を、
見たことには△を かきましょう。」
①( )きのう、林のなかで、
かぶと虫を つかまえました。】
マ『昨日さ、林に行った?』
息『??いや。行ってないやん。』
マ『行ってないやん?じゃあ、そんなことしてる人見た?』
息『えー見てないよ。』
マ『もしな、これ、林に行って、かぶと虫つかまえてたら◯って書くねん。で、もしそんな人を見たことがあったら△って書くねん。わかる?』
息『ああ!わかった!』
マ『じゃあ、②は?』
【②( )みずうみは大きくて、水がとてもきれいでした。】
マ『湖いったことあったけ?』
息子『ない。行ったことないし。見てもない。』
マ『じゃあ、どっちもかけへんよなー。③は…』
【③( )ぼくは、きょう、学校でにわとりにえさをやりました。】
マ『学校ににわとりいる?』
息子『いーへんよ!!やってないし!見てもない!!』
マ『よなー。④は…』
【④( )先生はせがたかくて、とてもふとっています。】
マ『これは!!?』
息『いてる!!見ただけじゃない!学校にいるいる!!◯やわ!!』
マ『よな!!じゃあ、どうなる?』
息『④だけが◯やわ!』
マ『そうやな。正解~。変な問題つくるよなー。どこの学校にもにわとりいるんじゃないのになー。』
と、ここでようやく私は自らの間違いに気づき、「あれ?もしかして勘違いしてる?」と思い、4つの問題を見直した。
マ『ごめん!これ、ママが間違ってたわ!「見たよ」って話と、「やったよ」って話に分けてねってことやわ!』
息子『?…ああああ!そっか!』
二人でした問題の勘違いに、なんてわかりにくい問題だと言いながら笑っていると
娘が【小学二年生作文練習ドリル】を片手にさらに大きく笑いながら駆け寄ってきた。
『ママ!すごいの見つけた!これ、私が大分前にやってたドリル!そっちの二年生のドリルのとこに一緒にあったんやけど、今見たら笑えるで!』
そう言いながら、どうやら私が添削を忘れていたような、そのページを見せつけてきた。
【①一すんぼうしは、おにをたいじして手に入れた「うち出のこづち」のおかげで、りっぱな青年になりました。あなたなら、どんなふうに へんしん したいですか。
娘答「私は、へんしんしたくありません。自分で、この体をはたらかせ、もしなにかになりたいのなら、自分でがんばります。」
②絵の中にイメージ(そうぞう)で入りましょう。イメージする前に目をとじ、大きな こきゅうを 五~六回すると、一すんぼうしのせかいへ行けます。イメージの中で見たこと聞いたことについて、書きましょう。
娘答「いけてません」】
娘曰く
『ていうか、うち出のこづち、変身アイテムじゃなくて、願い事きいてくれるアイテムやしな。』
性格が国語学習を難しくさせている気がしてならない……
(×3人)
『助けてドラ◯も~ん!』
『ママァ。ドラえもんの道具にさ、人生やり直し機ってあるんやけどさ、もしそれで昔の自分に戻れたら、ママやったらいつの頃に戻りたい?』
台所で夕食のパスタを湯がきながら、野菜を切っていると食卓のほうから娘が尋ねてきた。
『えー。わからん。いつに戻りたいっていわれてもなあ、いつでも面白いっちゃ面白かったけどなあ。それさあ、昔に戻ったら今も変わってしまうんやろ?』
『そりゃそうやん。』
『じゃあ、いいわ。別に戻らんでいい。むしろお化けみたいに昔の自分とこに行って『もっと勉強しろよ』とか『資格とれ』とか『お金貯めとき』とかをちょこちょこ耳打ちするくらいならしたいかなー。』
『えー。そんなもんなん?』
『そんなもんでしょ。今べつに死にそうなほど困ってるんでもないし、今がなかったことになる方がいやじゃない?』
『んん。まあ、たしかにそうかなー。』
『今ママ、結構いいこと言ってる気がするー。思わん?』
『ふーん……』
パスタを一本お箸で掬い上げてかじると、丁度ゆいい具合にゆで上がっていたので、流しの上で左手でザルを持ち、パスタをザルに開けようとした。少し手元がくるい、ゆで上がったパスタが勢いよくザルに流れ込んできたと同時にパスタのゆで汁がザルを持っていた左手にぱしゃっとかかった。
『あっつーー!!!!今!今っ!!今すぐっ!!ママ今すぐその機械ほしい!!2分前!戻りたいっ!!』
『え?何してるん?』
『パスタのお湯かかったーー!!!』
食卓から「またやらかしたか…」という空気を放つ娘を感じながら、ゆで上がったパスタを放置し、水道水で左手を冷やした。
勉強、資格、貯金より、そそっかしさをどうにかしろと、過去の自分に言いに行きたくなった。
おあずけ
はい、再びバカンス開始~。
10年以上フランスに住んでいても、やはりこのバカンスの多さにだけはなかなか慣れない。3月初旬に2週間のバカンスが終わり学校のある日常へと戻ったかと思ったら明日からまた2週間の春休みである。
この1ヶ月は役所関係の書類作業に追われて、紙紙紙紙紙紙紙紙…紙に囲まれ過ごし、もう本当にうんざりしきっていて、全ての作業を終わらせたら、自分へのご褒美としてバカンスに入る前に一人でこっそり自宅生牡蠣ランチを楽しもうと心に決めていたのだ。それなのに、何を思ったのか昨日の朝マルシェへ買い物に行き、
「…でも子供達も何かとがんばってたし、ママだけ一人でご馳走もなあ…せっかくやしサーモンのお寿司でも作って三人で食べよかな…」
等と思ってしまい、牡蠣を買いに行くのをやめ魚屋さんでサーモンを買って帰ってきてしまったのだ。
冷えた白ワインと生牡蠣を一人でこっそり楽しむという最高の会を心の底から楽しみにしていたというのに、我ながらよくこんな風に予定を変えたなと感心しながら、買わなかった生牡蠣の代わりに何を昼御飯に食べようかと台所の引き出しや冷蔵庫を物色した。しかし結局、色々調理するのも面倒だとインスタントラーメンを昼御飯に食べることにしたのだ。
小さなお鍋にお水を入れてガスコンロのつまみを回した。しかし、カチッカチッと乾いた音がするだけで火がつかない。「あれ?」と思い、何度つまみを回すも火がつかない。『え~なんなんよ~』と呟いた瞬間、マンション一階にはってあった【ガス菅工事のお知らせ】の紙を思い出した。そういや、ガス管工事につき丸一日ガスが使えなくなる日があるって書いてあったなと「あー今日やったかー…」と実感し、昼御飯のインスタントラーメンをあきらめた。生牡蠣を諦め、ラーメンすら諦め、こんな昼御飯になるはずじゃなかったのに…と思いながら食パンを食べた。
昼御飯の食パンを食べながらも、すでに私の頭は夜ご飯でいっぱいだった。ガスが使えないとなると夜ご飯はどうなるのだと。我が家では随分前から、米しか炊けないような家電に用はないという考えのもと、米を土鍋で炊いているのだ。せっかくの生サーモンがあるのに、米がなければ寿司にはできない。「こんなはずじゃ、、、」と舌打ちしたくなるような思いを抱きながら生サーモンを無駄にすることなく生かせる道を考えた。
はい。
じゃじゃーん。
サーモンのタルタル白ワインセット
白ワインを注ぎながら、さあ、今から夜ご飯だ!と子供達に声をかけていると、トントンっとドアをノックする音がした。ドアを開けると二人のムッシュがたっていた。
『ガスの工事をしててね、ガスがちゃんと開通してるか確認したいのですが。』
とのこと。
食卓には、注いだばかりの白ワインとサーモンタルタル、バゲット、バターが我々三人を待っている状態だった。
ガスメーターを見たり、カチカチとガスコンロの様子を確認したり、書類を確認してサイン…長かった。
『もう、今からガス使えるからね。では、よい夜を。』
と言って、ようやくムッシュ達は下の階へと降りていった。
急いで食卓につき、
『よし!やっと食べれる!いただきまーす!!』
と三人でやっとありつけた夕食を食べ出した。
『なんで、このタイミングでくるかなー。ただでさえお寿司お預けでさ。ギリギリでまたお預けって、どうなんよ。』
と、ありつけた白ワインをぐびぐび飲みながらぼやくと娘が一言
『絶対それ言うとおもった。笑』
と言ってきた。
娘の理解が嬉しくも、実は一人で昼間に牡蠣会を企んでいたのだが…というプロローグは非難轟々必死になるなと思えたので、子供達には伏せておいた。
ぐびぐび飲み過ぎたため、
白ワインの写真は撮りそこねました。